森永卓郎「私は生涯、一匹オオカミを貫く」余命宣告を受けて確信した「親友なんかつくってはいけない」理由
■強く生きるためには友達を作るべきではない ちなみに私にはプライベートでも、つきあっている友人がいない。 唯一、漫画家のやくみつるさんとはコレクションの話で馬が合うので、いわば友達づきあいをしているつもりでいた。 ところがある時、テレビに出ていたやくさんが「僕には一人も友達がいません」と語っていて、私は「ああ、そうなんだ」と思った。それでいいのだと納得した。 話をしていて楽しいと感じれば友達なのかといったら違うだろう。 やくさんとはコレクションの話では盛り上がるが、それはそれだけのことで、やくさんとは、プライベートの連絡を取り合うことは一切ない。だからこそ、純粋に趣味を共有できるのかもしれない。 結局のところ、自分の問題は自分で解決するしかない。 その覚悟がない人が友達を作りたがる。 逆説的に言えば、強く生きるためには友達を作るべきではないと思う。 親友なんてものは絶対に作ってはいけない。 アイツとは互いに理解し合っているなどという発想は人を確実に駄目にする。第一、自分のことを理解しているのは自分だけだ。このことについては、余命宣告を受けていよいよ確信を深めた。 ■人は、一人で生まれて一人で死んでいく 死に向き合うのは孤独な作業だ。私にとっては一人で考える孤独な時間がありがたいのだが、いずれにしても誰かと共有したところで意味がないのだ。 一人で死んでいくことが怖くなってしまうかもしれない。 また、老後生活に入ってから、現役時代の友人関係を引っ張り続けるのも最悪の選択だ。一緒に飲みに行こう、一緒にゴルフに行こうという誘いに応じていると、どんどん老後資金を食いつぶすし、何より自由な時間を奪われてしまうからだ。 その意味で私は、人はどんどん一人になる訓練をしていかなければいけないと思う。 もとより人は、一人で生まれて一人で死んでいくのだから。 ---------- 森永 卓郎(もりなが・たくろう) 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授 1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。専門は労働経済学と計量経済学。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』『グリコのおもちゃ図鑑』『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』『なぜ日本経済は後手に回るのか』などがある。 ----------
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授 森永 卓郎