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「戦争は悲惨という以前に…」記録への意識低い日本 “美談”が後世への冒涜に

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西日本新聞

 戦後75年に合わせて考えている「平和学習」。世界史や教育の意義を読み解く多くの著書がある立命館アジア太平洋大(APU)の出口治明学長に現状や課題を聞いた。

-平和学習の現状をどう見ているか。

 「情緒的に平和が尊い、戦争は悲惨だということ以前にまずなすべきことは、過去と向き合うには正確な記録を残すという教育だ。正確な過去が分からなければ反省もできず、教訓も引き出せない」

-日本では記録することへの意識が低い。

 「今夏に見たNHKの戦後企画は、米国の公文書館の新たな公表資料を基にしていた。米国との戦争だったので米国に記録が残っており検証できたが、日本に資料がないということ自体が恥ずかしい。一部の政治家は『秘密は墓まで持って行く』ことを“美談”として語るが、これは後世の人々に対する冒涜(ぼうとく)。少なくとも米国並みに公文書を残し、一定のルールで公開すべきだ。最近では新型コロナウイルス対策に対する政府の専門家会議で、議事録を作っていなかった」

-日本が例外なのか。

 「何百年も前から海外では歴史を記録してきた。(唐の太宗・李世民の言行録)『貞観政要(じょうがんせいよう)』に関する本を著したが、この時代にも歴史を記録する役職を置いていた。太宗が『良く書いてくれよ』というと、記録係は『良いことも悪いことも全部書き留めております』と返答し、干渉させないよう記述内容を見せることも拒んだ。当時から、国のトップの言動はしっかり残さなければ、後世の人が善しあしを判断できないという知恵があった」

-記録があれば、それを基に教育もできる。

 「教育基本法を読んでみたが、教育の目的は二つある。一つは、自分の頭で考え、自分の言葉で意見を言えるようにする。もう一つは、社会に生きていく上での武器(知識)を与えること。政府や政治、選挙やお金とは何か。抽象論ではなく、具体的に社会で役に立つことを教える必要がある」

-二つの目的に基づく教育は行われているか。

 「戦後の日本は復興が第一だった。結果的に学校は製造業の工場で働く人を育成してきた。今もその傾向にあり、(1)偏差値がそこそこ高い(2)素直(3)我慢強い(4)協調性が高い(5)先生の言うことを聞く-の5要素がベースになっている。素直であれば常識を疑わず、我慢強ければブラック企業でも耐え、協調性が高いと周囲に忖度(そんたく)し、先生の言うことを聞く人は上司に反抗しない。工場労働ならそれでもいいが、これだけでは新しいアイデアや豊かな個性が生まれるはずがない」

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