名将ハリルホジッチも苦悩したラマダンの罠。アルジェリア代表が直面した「サッカーか宗教か?」問題
アフリカではよくあるホーム寄りの判定だ
2014年のワールドカップ・ブラジル大会に向けたアフリカ予選は非常に変則的だった。2次予選で40チームを4チームずつの10組に分け、各組1位の10チームが3次予選に進出。その10チームを2チームずつ5組に分けてホーム・アンド・アウェーで対戦を行い、勝者の5チームがワールドカップに出場することとした。 アフリカ2次予選では難なくルワンダ、ベナン、マリを退けた“砂漠のキツネ”だが、当時もっとも体制が整っていたチームのひとつ、ブルキナファソと肉弾戦の真っ向勝負を覚悟しなければならなかった。2013年のCANで準優勝したこのチームは高い身体能力を誇り、攻撃的なスタイルを確立していた。 アウェーの第1戦、アルジェリアは相手に1点取られるたびに立ち直って点を取り返した。満員のスタジアムの電光掲示板には2-2の文字が煌々(こうこう)と輝いており、引き分けのまま試合は終了するかと思われた。しかし、残り時間1分というところで、審判はブルキナファソにPKを与えた。アフリカではよくあるホーム寄りの判定だ。アルジェリアはペナルティエリアに放り込まれたボールを、センターバックのエサイード・ベルカレムがライン上で肩に当ててインターセプトした。ところがザンビア人のシカズウェ主審は故意のハンドをしたとして、PKを宣言した。誰もが目を疑うような判定だった。アルジェリアの第1戦は2-3でブルキナファソが勝利した。 3次予選の第2戦は、地中海に面したアルジェリア北部の都市ブリダで行われた。第1戦から1か月が経過していた。ワールドカップ初出場に王手をかけたブルキナファソは、それを確実にするため次の試合では死に物狂いで戦おうとしていた。ホームで3得点を挙げたとはいえ2失点が大きく響いている。大会規定ではアウェーのゴール数が重要視されるからだ。あとのないアルジェリア側は、もちろんこの4週間のすべてを勝利に向けて費やしてきた。 スタジアムは試合開始7時間前から満員だった。試合は緊迫感にあふれていた。そして均衡を破ったのはアルジェリアのディフェンダーで主将でもあるマジード・ブーゲッラだった。相手ゴールエリア内でこぼれ球を拾うとシュートを決めて1-0とした。アルジェリアが史上4度目のワールドカップ出場を決めると、全国に設置されたパブリックビューイング会場はアルジェリア国民の歓喜の渦に包まれた。