犯罪被害者や遺族支援、福井市が条例案制定へ…来春の議会提出に向け27日まで意見募る
福井市は、犯罪被害者や遺族らへの見舞金支給や生活支援を盛り込み、被害者支援に特化した条例(特化条例)を制定する方針を明らかにした。市ウェブサイトに条例案を掲載。市民の意見を27日まで募っている。来年3月の定例市議会に提出し、同4月の施行を目指す。(荒田憲助)
福井県によると、県内の自治体で特化条例を施行しているのは、県と坂井、鯖江、越前、敦賀の4市。被害者の支援を市の責務として明記し、犯罪で死亡したりけがをしたりした被害者や遺族に見舞金を支払うよう規定している。
被害者らは同じ境遇の人が少なく孤立しやすいため、自治体の積極的な支援が求められるほか、居住地によって受けられる支援に差が出ないよう、遺族や福井弁護士会は条例制定を求めている。県も市町に施行を呼びかけている。
福井市によると、現在施行されている被害者支援に関する市条例は、2002年制定の市生活安全条例の第12条のみだ。「情報の提供、助言、相談その他の必要な支援を行う」と定めているが、経済的支援などが明確ではなく、市の責務を定める第4条に「被害者支援」は記載されていない。
市は、公開した特化条例案で、市の責務として被害者支援の施策を「実施しなければならない」と明記。見舞金の支給や、市営住宅入居の配慮なども盛り込んだ。市民らの意見を踏まえ、詳細な支援内容を決めるという。市は「坂井、鯖江両市などで制定の動きがあり、特化条例が必要と方針を見直した」とする。
長男を交通事故で亡くし、福井被害者支援センター事務局長を務める宮地美貴子さんは「どこに住んでいても等しく支援を受けられるのが理想で、福井市に特化条例が出来ることは喜ばしい。家事の代行サービスや一時保育の費用を助成するなど、日常生活の支援を打ち出した坂井市のように、福井市でも被害者を思いやった条例になれば」と願う。
被害者支援や特化条例の普及に力を入れる川上賢正弁護士は「長年待っていた。行政が被害者に寄り添うためには、条例という見える形で定め、具体性を持たせることが必要。中身を注視していく」と述べた。
条例案への意見は市ウェブサイトのほか、市危機管理課への持ち込みや郵送でも受け付ける。問い合わせは同課(0776・20・5234)。