佐藤浩市の息子・寛一郎、俳優業決意まで「かなりの時間が必要だった」
人気アニメーション映画を実写化した『心が叫びたがってるんだ。』で、野球部の元エース・田崎大樹を演じている寛一郎。自身のケガのせいで甲子園を逃してしまったという自責の念から、人間関係にもつまずき、常に苛立ちを抱えながら高校生活を送っているという役柄を繊細に演じているが、彼にとって本作は初の公開映画という新人俳優だ。
俳優業は小さいころから嫌でも意識させられる環境だった
寛一郎という名が、スポーツ紙やネットニュースで大きく報道されたのは、日本アカデミー賞の授賞式が行われた3月3日、記事は「俳優・佐藤浩市の長男・寛一郎が俳優デビューする」という内容だった。 偶然にもその日の夜、佐藤は映画『64-ロクヨン-前編』で、2度目の日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞を受賞。授賞式後の囲み取材で、息子が俳優の道に進んだことに「踏み込んでいったんだなという思い」と語っていたが、嫌が応にも注目される二世俳優(故・三國連太郎さんから数えれば三世)という道について、寛一郎は「俳優という仕事は、小さいころから嫌でも意識させられる環境だったので、心のなかにはありました。でもやらなくてはいけない仕事ではないし、自分でもやらないんだろうなという気持ちだったんです」と胸の内を明かす。 その理由を「俳優という仕事は大変だと自分にブレーキをかけている部分と、二世俳優という見方もされるだろうということへのためらいもあったんです」と語ると「でも、やっぱり小さいころから映画などに触れていましたし、役者として父親を強く尊敬している部分もあったので、自然と俳優という道に進みたいという気持ちになったんです。ただ、その覚悟を口にするまでは、かなりの時間が必要でしたし、葛藤もありました」と心情を吐露した。
「アニメの模倣にはしない」という熊澤監督との共通認識
本作では、挫折を味わった少年のナイーブな心を、繊細かつ荒々しく表現している。立ち姿、視線、背中で心情がにじみ出てくる存在感は、観ている人を惹きつける。メガホンをとった熊澤尚人監督とは「アニメの模倣にはしない」という共通認識のなか、「難しい役作りについては、僕にはまだわからない」と正直に語りつつも、しっかりと役に向き合い、自身との共通点を探しながら、大樹の繊細さを体現した。 同世代であるが、俳優の先輩でもある共演者の中島健人、芳根京子、石井杏奈らの存在も役に入っていくうえで非常に助けられた。「役について頭で考えても、わからないことは多いのですが、3人に会えたことで、いろいろ気づくこともできました」と現場で生まれる感覚の大切さも学べたという。