内山が2回KO負けでV12失敗 敗因は戦う理由の欠如
ドクターチェックを受けた内山は、比較的綺麗な顔をして、すぐに記者が待ち受ける控え室に用意されたパイプ椅子に座った。渡辺会長に「すいません」と謝ると、手際の悪いテレビ東京の代表インタビューが始まるまで長らく待たされた。 「(体が)あったまる前に終わった。何も出す前に終わってしまった。これが実力の世界。しょうがない」 2005年7月にデビューして以来、11年目にして初めてとなる敗戦会見。 第1ラウンドからコラレスは、右手を下げた変則のサウスポースタイルから、左を振り回して体をぶつけてきた。それが挑戦者の作戦だったという。 「KOを狙ったわけではない。だが、内山はハードパンチャー。こちらから先に左から攻撃していかねばいけないと、早い回からいった。打たれず打つ練習も準備してきた。その作戦が当たった」 内山は、受け身に回った。 「思ったより距離がやりづらかった。スピードがあるなと思った。左も見えづらかった」 “消える男”の異名を持つコラレスのタイミングと距離に戸惑う。乱暴な右のフックを浴びて1ラウンドのポイントはコラレスへ。 渡辺会長は、「第1ラウンドを取られるのは初めてのこと。あれ?っとなった」という。 内山は、対戦相手のビデオを徹底して研究するタイプではない。10日前にさらっと見たというが、どちらかと言えば、リング上の感性を大事にしてきた。 「見た映像よりスピードがあった」とも言うが、11度の防衛中には、変則スタイルやスピードで上をいかれる難敵とも対峙してきた。だが、そういう相手にもラウンドを重ねながら順応していき、長所を潰し、“ダイナマイト”でケリをつけるのが内山の経験則のはずだった。 まして相手は、前日、400グラムオーバーで1次計量を失敗、2時間の猶予を使ってサウナに行き、20分間の縄跳びと、パンツを脱いでやっとのことでリミットをクリアした。コラレスいわく、「パナマでは夕方の4時にやる計量を日本では、早め早めで午後1時にするからオーバーしただけだ」ということらしいが、厳しい減量の反動からか、この日はジャージを着て67.9キロにまで増量していた。スーパーフェザーのリミットが、58.9キロだから、3階級上のウェルター級の体格である。その情報を仕入れた内山陣営では、「前半は体重を生かしたパワーでくるだろうが、後半はスタミナが切れる。後半勝負で」との作戦を練っていた。