「薬飲んでません」処方薬の服用を中止する患者、仰天の言い分
近年、「副作用」などを理由に、自己判断で処方薬の服用を中断してしまう人が増えています。本連載は、国民健康保険坂下病院名誉院長の髙山哲夫氏の著書 『新・健康夜咄』(幻冬舎MC) より一部を抜粋し、「現役医師」の声をお届けします。
飲むとおならが出るため、薬の服用を中断したSさん
その日受診されたSさんの糖尿病のコントロールが今一つです。 考え込んでいる私に向かい、Sさんは「すみません。頂いた薬を飲んでいません。薬局でお薬をもらう時に『飲むとおならが出る』と言われました。それでもう飲むのを止めました」と恐縮した表情です。 確かにその薬の副作用には放屁が記載されています。改めて何故その薬を使用したのかの理由を話し、おならが出ることと薬の利点のどちらを選択するのかを説明しました。その結果Sさんも納得されて帰られました。
どんな薬でも、有用な作用の裏には必ず副作用がある
「毒にも薬にもならん」という言葉があります。副作用も出ないようなものは何の役にも立たないという意味でもあります。逆に言えばどんな薬でも有用な作用の裏返しに必ず副作用があります。 そうした副作用に十分に注意しながら使用すること、患者さんに対してもそうした副作用情報をお伝えすることは重要です。 院外処方が広まる中で薬局での服薬指導も強化されて来ました。お薬手帳を発行することはもちろん副作用に対しても細かく言及し印刷物を渡すところもあります。 そうした服薬指導は何のために行われるのでしょう。言うまでもなく事故が無いように、安全に間違いなく服用して頂くことに尽きます。でもその説明の根本は服薬して頂くことです。こと細かく説明しその結果「こんなに副作用がある。怖いから服薬をやめた」では何のために薬が処方されたのかわからなくなってしまいます。
「こんな怖い副作用があるのならとても飲めない!」
甲状腺機能低下症のための薬を処方されたNさんが「お薬情報」を持参し「こんな怖い副作用があるのならとても飲めない」と言って来ました。 手帳には「脈拍が速くなり心臓がどきどきする。体重の減少がある。下痢する。発汗が多くなる」などが記載されています。これらは全て甲状腺機能が亢進した時の症状です。言い換えれば薬が効きすぎて機能低下から亢進側に針が触れた状態です。 副作用と言えば副作用ですがもう少しわかりやすい説明が必要です。甲状腺機能異常時の症状を細かく説明し「だからこそ甲状腺ホルモンの状態をチェックしながら服用して頂くことが大切です」とお話しして帰って頂きました。