トランプ再選で米国はどう変わる?落胆をシェアするセラピーまで登場。 日本には伝わらないNYのリアル
大統領選挙の翌日である11月6日、NY市民の多くはどっぷり落ち込んでいた。 民主党カマラ・ハリス候補と、共和党トランプ候補の一騎打ち。接戦になると予想されていたのだが、早い時点で、トランプ陣営が勝利。いやいや、アメリカ国民よ、本当に犯罪歴のある人物を大統領に選んでいいのか、とニュースを見ながらがくぜんとした。 【写真集】トランプ氏の妻・メラニア夫人の美貌遍歴(20~40代)。モデル時代の写真も公開 リベラル派の多いNYでは、法律無視、女性蔑視、人種差別、暴言、移民排他、環境破壊の旗印となるトランプ候補は支持率が低い。思い起こせば、2016年。ヒラリー・クリントン候補との戦いで、トランプ陣営が勝利を収めた翌日のNYは、どんより沈んでいたものだ。その当時、ユニオンスクエア駅で行われたのが、ポストイットに気持ちを書いて、壁に貼りつけるという行為で、市民が傷心をシェアしてサポートしあったもの。今回も「サブウェイ・セラピー」が登場して、市民たちが思い思いの気持ちをつづって、壁に貼りつけることになった。
NYは旅行しても安全なのか?
現在のNYは旅行するのに危険なのか、そうではないのか。ここはよく尋ねられるところなので、説明しておくと、たしかに安全面では悪くなっている。 まずドラッグ依存症で、道で倒れたり、不審な動きをしたりする人が、コロナ後に増えた。地下鉄のなかでのケンカから発する暴行事件や、発砲事件もある。 私自身、地下鉄のホームの端には立たないようにしているし、外出時にイヤホンをつけたまま外の音が聞こえないような行為はせず、注意を配っている。 では、大量の不法移民が流れこんできて、暴動を起こしたり、車に火をつけたり、映画『ジョーカー』みたいになっているかというと、そんなわけではない。 移民を表す言葉には、immigrant(移民、国に定住する人たち)と、migrant(季節労働者、移動者)という違いがあり、今回の大統領選でよく使われたのが、このマイグラントという呼び方だ。 そもそもNYに大量のマイグラントたちが来たのは、テキサス州グレッグ知事が送りこんできた影響も大きいであろう。22年の8月以来、テキサス州知事は、3万7100人の不法移民たちをトラックに詰めこんで、NYに送り込んできている。 対してNY市が支払う費用が、市当局の予測では、過去2年間にわたる移民の宿泊費と今年度の予算を合わせると、24億1000万ドルを超える見込み。その費用の莫大(ばくだい)さに、不満を持つ市民が増えるのはわかるところだ。 では、マイグラントたちがNY市内に住みつくのかといったら、そうとは限らない。仕事のある地域に移るからだ。アメリカの多くの農場では、野菜の植えつけと、刈り入れ時に季節移動者たちの力を使って、収穫を上げている。労働者はメキシコからのマイグラントが多く、フロリダ、テキサス、アリゾナ、カリフォルニアなどの農場がメインとなる。2018-20年の調査では、41%が不法移民だという。 つまりアメリカの農業は不法移民に支えられている部分が大きいのだが、彼らは働いて稼いだかと思えば、また一斉にアメリカから強制退去させられて、そしてまたも戻って来るというマッチポンプのような状況なのだ。 この構造じたいは、政権が変わっても続くであろうことは予想できる。 おのれファーストでいく政権で、はたして次の4年間はどうなるだろう。アメリカでは今、「4年間アメリカを離れていられる豪華客船クルーズの旅」という商品も売り出されている。