息子も規格外! 辰吉Jr、2週間前に交通事故に遭いながらKO勝利!
リングサイドには、メインに出場した中澤奨とアマチュア時代から親交があって応援に来たWBO世界Sフライ級王者の井上尚弥(大橋)と、東洋王者になったばかりの井上拓真(大橋)の最強兄弟がいたので、世界王者の兄に話を聞く。 「パンチ力とパワーが目立ちましたね。2ラウンドで、まとめて決めてしまうところに凄いものを持っていると思う。ただ、アマチュアでもやっていない選手なのだから、いろんな意味でこれからでしょう」 岡村に一度は見せ場を作らせたエディタウンゼントジム会長で、現役時代に名ボクサー、ジェフ・チャンドラーと3度世界戦で激闘を演じた村田英次郎も、「スピードと、左ジャブでペースを作りたかったが、持たなかったね。寿以輝君は、パンチがあった。プレッシャーも相当なもの。一発食ってやろうとマッチメイクを受けたが、彼に強くなってもらいたいという思いもあった。雰囲気を持っているし、このまま関西のボクシング人気を盛り上げてくれれば」と、エールを送った。 次戦は、9月22日に東京の大田区総合体育館で行われるWBC世界バンタム級王者、山中慎介(帝拳)の防衛戦のアンダーカードでの出場が予定されていたが、怪我のこともあってその回復の試合間隔もないため、試合後、父の辰吉が本田明彦会長に相談して“東京デビュー”はお預けとなった。そして父は今後の息子のプランについて爆弾発言をした。 「バンタムでは、100パーセント無理。これで22、23歳ならわかるが、まだ18、19歳で体も成長していく。骨格が俺とは違うもの。練習、食事、トレーニングに加えて減量というものがあるが、減量に苦しむより今はベストの状態で練習を積み、試合で経験を積んでいくことが大事。もうバンタムはやめたおいたほうがええ」 大阪帝拳の吉井会長も同じ考えで「次戦はスーパーバンタムで考えている。将来的にはスーパーバンタム、フェザークラスが適しているのかもしれないが、いずれにしろアマチュア経験もないのだから時間はかかる。(世界までは)3、4年はかかりますよ」と言う。 階級の問題について辰吉寿以輝自身は、「別にどの階級でも」と、こだわりはない様子だが、デビュー2戦目にして将来どの階級で戦うかがもう話題になるのも、辰吉Jrへの注目度の高さの裏返しだろう。 「まだ2戦やん、それも2ラウンドやから、まだわからへんね。でも試合には練習でしてきたことしかでない。 その意味でよく練習しとんなとは思った。父としては良かったと思うし、練習の質が試合に出ていた」 辛口の父は、そう言って次男を讃えた。 吉井会長の言うとおり、井上兄弟や、試合会場にいたWBO世界ミニマム級王者、田中恒成(畑中)のような豊富なアマチュア経験のない辰吉Jrに彼らと同じような「プロ何戦目で世界」という早急な結果を求めるのは酷だろう。だが、辰吉Jrへ抱くロマンは、一戦一戦、膨らみつつある。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)