誰もが気づかないフリ。でも、もう無視できない菅首相という「緊急事態」
『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、テレビ出演した菅首相の姿に落胆する。 (この記事は、1月18日発売の『週刊プレイボーイ5号』に掲載されたものです) * * * ひどいものだった。緊急事態宣言直後の1月8日、『報道ステーション』(テレビ朝日系)での菅首相のインタビューである。ただし、ひどいというのはネットで炎上した富川悠太アナによる首相忖度(そんたく)の"ヨイショ進行"のことではない。 このインタビューは生放送ではなくスタジオでの収録。番組側から質問事項が伝えられ、首相は秘書官らが書いた想定問答を基に入念に準備して臨んだはずだ。もちろん、まずいところは編集でカットされるから、流れたのは良いところだけだ。 ところが、放送を見ると菅首相の悲惨な姿しか流れなかった。まともな受け答えができず、言い間違え、言いよどみの連続だ。あろうことか、感染対策の柱のひとつ「テレワーク」という単語が出てこない。なんとか首相をもり立てなければと焦った富川アナが「テレワークですよね?」と助け舟を出す始末だ。 富川アナから「年末に(中略)2000人を超える東京の感染者を想像できたか?」と問われ、「いや、想像はしていませんでした」と答える首相を見て、多くの国民は失望を覚えただろう。 最悪の事態を予測して先手先手で対処するのが危機管理の常識。その司令塔である一国のリーダーが「想像すらしていなかった」と悪びれる様子もない。まるでコロナは人ごとと言っているかのような口ぶりである。 政治家にとって言葉は命であり武器だ。特に政策は官僚や専門家でも作れるが、人々を説得して政策への一致した協力を取りつけるのは政治リーダーの最も重要な役割となる。 特に、コロナのような危機対応ではそれが文字どおり生命線になる。現在、政府・与党は「新型インフルエンザ等特措法」の改正に動いている。改正されれば、飲食店に休業命令を出すことができ、それに背いた店に過料を科すことができる。