中国、対米交渉の切り札披露-トランプ政権に備え「慎重な報復」準備
(ブルームバーグ): 中国が第2次トランプ米政権との貿易戦争を想定し、先手を打った。トランプ次期大統領が関税による対中制裁を実行に移した場合に備え用意しているさまざまな対抗手段を披露した。
バイデン政権は今月、人工知能(AI)半導体の重要部品に中国がアクセスするのを制限。これを受け、中国政府は新たな米中貿易戦争で見込まれるターゲットが何かを世界に向け発信した。
共産党の習近平総書記(国家主席)率いる中国指導部は半導体メーカー、米エヌビディアに対する独占禁止法に関する調査を開始。軍事利用可能な幾つかの希少材料の輸出を禁止するとともに、ドローンを製造する際に使用される主要部品の米国および欧州への販売を制限した。
ギャブカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベダー氏は、「特にエヌビディアの独禁法調査を巡り、中国政府は対米交渉の切り札を事実上作り出している」と指摘。「すぐにそうした切り札を使うというわけではないが、交渉の準備をしている」との見方を示した。
中国政府の対応は、欧米の戦略を参考にしたものだ。輸出管理体制を強化し、国内外の企業に適用することで、一部製品の対米販売禁止を盛り込んだ。
この報復措置は、脆弱(ぜいじゃく)な米中関係を揺るがすことなく、また中国の自国経済に悪影響を及ぼさずに米国を威嚇するよう調整されたようにも見え、大半は象徴的なものだ。
党中央政治局は9日、2025年にはより大胆な経済支援を行うと表明し、金融政策のスタンス緩和という異例の約束も行った。こうした発表は詳細に欠けるが、11日からの重要会議「中央経済工作会議」で新たな手掛かりが示される可能性もある。
JPモルガン・チェースの中国担当チーフエコノミスト、朱海斌氏は「国内の安定促進が恐らく関税という外的なショックに備える最善の策だろう」と述べた。
報復合戦
貿易戦争に備えているように見える中国だが、今世紀最長のデフレと住宅バブル崩壊による痛みが4年目に突入しようとしていることから、より穏健な対応を望む中国国内の声もある。