核戦争を止め核兵器のタブーを確立してきたことこそ日本被団協の最大功績だ
ノルウェーのノーベル委員会が2024年10月11日、今年のノーベル平和賞に日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)への授賞を発表したことは、被爆者の核廃絶行動を高く評価し、若い世代にその行動の継承を強く促す点で画期的な意味を持つ。 対ウクライナ戦争で核使用の脅しを掛け続けるプーチン大統領のロシア、パレスチナ自治区ガザへの核使用をほのめかすイスラエル、アメリカと対決し核開発を加速する北朝鮮。国際社会はこれらの脅威を制止することができず、核戦争が明日にも起きかねない危険性はかつてなく高まっている。
この危機のなかで、ノーベル委員会は「一つの心強い事実」(授賞理由文)を確認している。それは「80年近くの間、戦争で核兵器は使用されてこなかったということ」である。 日本被団協やその他の被爆者の代表らによる並外れた努力は、核のタブーの確立に大きく貢献してきた。核保有国がより破壊的な核兵器開発を加速させている今日こそ、被団協に代表される反核勢力が結束して核廃絶の声を上げ、危険な独裁指導者らが核の引き金を引くことを抑止するよう、ノーベル委員会は期待している。
■ICANに並ぶ快挙 2017年7月、非核保有国勢力が結束して核兵器禁止条約を国連で採択させた。次いで同10月、核禁条約の成立に多大な貢献を果たした国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)にノーベル平和賞が贈られた。日本被団協はICANの中でも被爆の惨状を訴え続け、核禁条約の成立に力を発揮した。そのことが今回の受賞につながったと言えよう。 残念なのは、被団協の母国で唯一の被爆国である日本が、核禁条約の批准を回避し続けていることだ。
日米安保条約の下、アメリカの「核の傘」に保護される代わりに中国、ロシア、北朝鮮との核対立は先鋭化を免れない。日本の歴代首相の核廃絶をという呼びかけは、広島、長崎の市民にはむなしく響いている。 現在、核禁条約の批准国は約70国・地域。アメリカとの同盟関係で日本と同じような立場にあるドイツは核禁国会議にオブザーバー参加し、限定的ながら核廃絶への志向を明らかにしている。日本政府がドイツと同じ道を選ぼうとしない理由は、過度の対米従属意識を払拭できないからだろう。