17音で「世界の捉え方が変わる」俳句の教育効果 俳人・夏井いつき「言葉の技術」は義務教育の間に
俳句はセンスも年齢も関係ない
俳句ブームの火付け役となった、夏井いつきさん。テレビ番組で辛口コメントとともに俳句を添削する姿が印象的だ。俳句には、「自分を取り巻く世界の豊かさに気づく」「ネガティブな感情を和らげる」といった“効果”がある、と語る夏井さんは、俳人となる前、中学校の国語教諭を8年間務めていた。「学校教育の真ん中に俳句という芯を通すといい」と言うが、その真意とは。 ──俳句を作る魅力はどんなところにあるでしょうか。 俳句は難しいと思われていますが、実はものすごくハードルの低い文芸なんです。作り方の基本である「取り合わせ」※という型を覚えれば、たった5分で一句作れます。誰でもあっという間に俳人になれる。そこが魅力の1つですね。 「子どもは発想が豊か」「大人になると頭が固くなる」と言う人がいるけど、あれはウソ。詩句というのは、言葉と言葉の関連性をひねったり、裏返したりするところに生まれてきます。ところが、小さな子どもは、まだ語彙や文法が未熟で、Aということを伝えようとしても、うまくいかずBになってしまいます。 つまり、結果として文脈がねじれて詩的になっているだけのこと。それを大人が聞いて「おーっ、詩になっている!」と解釈しているだけなんです。 語彙が増え文法も身に付き、体験も増えていく10代の子どもたちに、俳句の作り方を教えてあげると、ちゃんと質のよい作品が作れるようになる。俳句は発想力やセンスといった才能じゃないし、年齢も関係ありません。3歳でも100歳でも私は同じように教えます。 ※ 夏井さんによると俳句の技法は大きく分けると以下の2つ 「取り合わせ」:季語とほかの要素を組み合わせて作るもの。初心者向き 「一物仕立(いちぶつじた)て」:季語のことだけで一句詠むもの。オリジナリティーを出すことが難しいため、初心者には向かない 出所:『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)