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客室の空気、どうやってきれいに? ANAの500席超777も3分で換気

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Aviation Wire

 5月25日に緊急事態宣言が約1カ月半ぶりに全国で解除された。航空各社では、移動自粛に伴う大幅な需要減に対応するため運休が大量発生しており、大手2社では国内線を約7割減便している状況だ。今後徐々に空の便を使う人も増えていくことが予想されるが、客室の空気が常にきれいになっている点は、なかなか理解が広まらないようだ。 【777のHEPAフィルター】  確かに飛行機は窓が開かないが、客室の空気は3分ほどですべて入れ替わる構造になっており、長距離国際線を飛ぶ大型機でも、近距離の地方都市を結ぶターボプロップ(プロペラ)機でも機体の大きさを問わず同じだ。  では、実際に飛行機の中ではどのように空気が流れているのだろうか。全日本空輸(ANA/NH)の整備センター技術部の奥貫孝リーダーに聞いた。 ◆HEPAフィルターはどこに?  奥貫さんによると、客室の空気は主に左右の主翼下にあるエンジンから取り込み、天井裏のエアコンダクトから流れ、左右の壁の下部から床下へ流れて機外へ排出されるという。一部は客室へ循環するが、ここで重要な役目を果たすのが空気をろ過する「HEPA(高効率粒子状空気)フィルター」だ。  HEPAフィルターは、JIS規格で性能が規定されているもの。0.3ミクロン以上の粒子を99.97%捕集でき、病院の手術室の空調設備にも使われている。「N95」と呼ばれる医療用マスクは、0.3ミクロンの粒子を95%以上捕集できるものだ。  2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際にも、HEPAフィルターの有効性は確認済み。ボーイングなど機体メーカーでは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)をHEPAフィルターで捉えられるとしている。  羽田空港の格納庫で整備作業中のボーイング777-300型機(登録記号JA756A、2クラス514席)を見てみると、貨物室奥の壁が取り外され、普段は目に触れないHEPAフィルターが見えた。フィルターの数や設置場所は機種により異なるが、777-300の場合は機体上部と下部に4個ずつ、1機あたり8個設置している。「ANAの機体は、ターボプロップ機のQ400を含めて全機種がHEPAフィルターを備えています」と、奥貫さんは説明する。  HEPAフィルターの交換は、自動車の車検にあたるCチェック(重整備)の際に行われ、おおむね2年に1回程度。「機体メーカーからは、従来と同じ交換サイクルで問題ないという回答を得ています」(奥貫さん)と、機体を整備する上で新型コロナウイルスに関連した追加作業はないという。  一方、客室の消毒作業では薬剤を使用するため、機体やシートなどに影響がないものの情報を整備部門が清掃する部署に提供しているという。 ◆3分ですべて換気  HEPAフィルターでろ過された空気は客室内に滞留せず、常に天井から床下へ向けて流れている。777には窓のない席があるが、ここに空気のダクトが通っている。床下に流れた空気は多くが「アウトフロー・バルブ」と呼ばれる空気の出口から機外へ排出され、一部は機内でHEPAフィルターを経て客室へ循環する。777の場合、アウトフロー・バルブは機体前方と後方の2カ所ある。  では、500人以上乗れる777-300のような大型機と、100席に満たないQ400(1クラス74席)は、同じように3分で入れ替わるのだろうか。  奥貫さんによると、「各機種の設計基準に、乗客1人当たり必要な酸素量が定められています」という。各機種とも、乗客1人当たりでは1分間に約200リットル以上の空気が換気されるようになっており、ドラム缶1本分にあたる空気が入れ替わっている。3分で機内の空気がすべて入れ替わるということは、1時間に20回換気している計算になる。 ◆ANAはマスク着用事実上義務化  ANAも加盟する航空会社などの業界団体IATA(国際航空運送協会)が、主要航空会社18社を非公式調査したところ、乗客同士の感染が疑われる事例はなく、降機後に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認された乗客1100人を調査したところ、同じ飛行機に搭乗した10万人超の乗客同士で二次感染はなかったとしている。  ANAは乗客に対し、6月1日からマスク着用を事実上義務化。非着用の場合や発熱など体調不良の乗客は搭乗を断る場合があるとしている。IATAの調査結果や機体メーカーの見解から、こまめな手洗いや消毒、マスク着用といったルールを守れば、機内で感染するリスクは低いと言えるだろう。

Tadayuki YOSHIKAWA

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