ザックJ、優勝の裏に見えた未来
国内組のプライドと意地
ワールドカップに出場するためのラストチャンス――。国内組にとって今回の東アジアカップは、そう位置付けられていた。 期間はわずか10日間。選ばれた選手たちは一緒にプレーするのがほとんど初めてと言っていいほどで、ともすれば、ザッケローニ監督への“アピール合戦”の様相を呈してもおかしくなかった。 だが、強引なアピールに走ろうとする者は、最後までいなかった。コンセプトは守られ、チームプレーも随所に見られた。完全なアウェーで韓国に2-1で勝利した背景には、Jリーグでプレーする選手たちの強い思いがあった、と原口元気は言う。 「優勝できなくて、やっぱり海外組がいないと何もできないと思われるのが嫌だった。そこに関しては意地があった。Jリーグ組だけのチームだったので、みんなでそういうことを話していた。この優勝でJリーグが少しでも盛り上がっていければ」 ムードメーカーとしてチームを盛り立ててきた槙野智章も、アピールよりもタイトルを意識していたと語る。 「大会中、このタイトルを獲りたいとずっと思ってきた。海外組だけじゃないぞ、という想いは、みんな持っていたと思う。『優勝』という言葉は、大事なキーワードでした」 国内組のプライドと意地がたぐり寄せた戴冠――。それは結果として、ザッケローニ監督に対して、大きなアピールになったに違いない。 短期間でチームとしてまとまったという実績は、代表の常連組の中に加えても、すぐに馴染めるのではないかという印象を指揮官に与えただろうし、逆に、結果を残せなかった大会で見出された新戦力が、ワールドカップという大舞台で貴重な戦力になれるとも思えない。 大会を終え、ザッケローニ監督は宣言している。 「現時点で代表に呼べる選手がいるし、将来的に代表に入ってくる選手もいると思う」 どうやら今回のメンバーの誰かが、8月のウルグアイ戦で、常連組への挑戦権を得られるのは間違いなさそうだ。