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【峰宗太郎医師が検証】新型コロナの死亡者数、日米でなぜこれほど差ができたのか

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webマガジン mi-mollet

世界中に被害をもたらしている新型コロナウイルスによるパンデミック。アメリカでの死亡者数が10万人を突破したというニュースも先日飛び込んできましたが、その一方で日本での死亡者数は886名※と、その差は明らかです。ともに大都市を抱える国として初期は比較されることも多かった両国に、なぜこのように大きな差ができたのでしょうか。また、インフルエンザなどほかのウイルス感染症との違いとは? アメリカの国立研究機関博士研究員で、ウイルス学や免疫学が専門の峰宗太郎先生に解説していただきました。 ※厚生労働省5月30日発表。クルーズ船での感染による死亡者13名を除く

大きな地域差、考えられる要因はおもに7つ

アメリカではなぜここまで死亡者数が増えてしまったのか。逆に、日本ではなぜ死亡者数が抑えられているのか。これは非常に「よい質問」で、答えからいうと現時点では全くわかりません。  日本や韓国などのアジア諸国と欧米(アメリカ・イギリス・イタリアなど)を比較すると、日本や韓国での感染者数およびその伸び方、重症化率、致死率はいずれも欧米に比較して少なく(小さく)なっています。この差がいったいどこからきているかについては、正確なことはまだわかっていませんが、可能性はいくつか考えられています。 1.人種の差 ウイルスに感染される側であるヒトの遺伝的な素因の違いが、この感染症へのかかりやすさや重症化しやすさを規定しているのではないか、ということです。これは可能性としてはないわけではなく、他の感染症などでも人種によって発症率が異なる疾患はあります。 遺伝的な原因として特に話題にのぼるのは、 HLAという免疫に関係するタンパク質の遺伝的な差や、ACE2という新型コロナウイルスSARS-CoV-2が細胞にくっつくときに利用しているタンパク質の遺伝的な差などです。しかし現状、これらだけで説明できるほど明確な差があるわけではなさそうで、しっかりと検討しなければわからないという状況です。 2.ウイルスの変異などによる差 中国で流行ったウイルスと欧米で流行っているウイルスの間に変異があるのではないか、という説ですが、日本でいま流行っているものは欧米のものにも近く、変異だけで説明するのは難しいかもしれません。さらに最近の研究ではウイルスの変異によってグループ分け(タイプではなく正確にはクレードといいます)がなされたりはしていますが、病原性といって、ウイルスの病気の起こしやすさについては大きな差はなさそう、ということも言われてはいます。そういったことからも、ウイルスの変異によって大きな差がでているというのは現状なさそう、とはいえると思います。 3.免疫状態の差 例えば、アジアでは新型コロナウイルスではない、風邪を起こす旧来からあるコロナウイルスがよく流行っていて、そのためすでに免疫を持っているのではないかという説や、ワクチンであるBCGを接種している国では感染が少ないのではないか、というような説ですね。BCGについては検証しようという試験も始まっていますが、まだ仮説の段階ですし、否定的な論文も発表されました。免疫状態の差というのは話題になりがちですが、これについても明確な差をしめした研究などはまだありません。 4.習慣などの差 挨拶の際に握手やハグ、時にキスなどをする文化であったり、マスクの着用率、さらには家に土足で入る習慣があったりなど、そういったことも影響しているのではないかという説もあります。この検証はかなり難しいと思いますが、可能性はあるかもしれません。 5.対策の差 日本や韓国では徹底した接触者調査を行ってクラスター対策を実施しています。感染した人が見つかった場合に、接触した人を探し出して、その人たちも検査することで根こそぎ感染者を見つけていく方法ですが、これを欧米の多くの国は行えていません。一部他の国でも実施していますが、特に日本などは徹底的にそれを行ったことが大きく差を作った可能性はあるかもしれません。 6.医療状況の差 中国・武漢やイタリア、米・ニューヨークでは医療の需給バランスが崩れるほどに感染者が増えました。医療の供給が追い付かなければ、死亡する人は増える可能性は当然あります。日本も医療の需給状態はギリギリのところまでいった地域もありますが、幸いなことに医療の供給がなんとか追いついていたということは大きいかもしれません。こうした「医療崩壊」があったか否かや、もともとの医療のあり方によっても致死率などでは差が生まれている可能性はあります。 7.感染の起こった場所や、ある意味でのタイミングの悪さ 大きなクラスター(集団感染)が発生してしまったりすると感染制御は当然難しくなりますし、ハイリスクの方(特に高齢者)の集団に感染が生じてしまうと、重症化率や致死率は上がることは多くなるでしょう。そういった感染の起こったタイミングや、起こった場所が死亡者状況の分かれ目になった可能性ももちろんあります。 実際、アメリカやイギリス、イタリアでは高齢者療養施設での集団感染が多く報告されており、そうした施設での死亡率も非常に高いものになっています。諸外国の高齢者施設と日本の施設は異なる面も多く(日本では、病気のある高齢者は病院に入っていることも多いです)、そうした差が今回の感染者数や死亡者数の差につながっている面はあるかもしれません。 このように多くの要因は考えられるものの、これが明確に差を生み出している、ということをはっきり言えるものはまだないのが現状です。もしこの差が明確になれば、よりよい感染予防策もとれますので、要因が解明されることを期待しています。

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