不人気仕事からごっそり人が消え、大混乱…トランプ氏がゴリ押し「不法移民1100万人追放計画」の恐ろしい結末
トランプ氏の大統領就任でアメリカは、どのようになっていくのか。国際ジャーナリストの矢部武さんは「いまのアメリカは不法移民なしでは、成り立たない。トランプ氏は『不法移民を国外追放する』と主張しているが、アメリカ経済に深刻な悪影響が出ることになる」という――。 【図表】テキサス州における重犯罪率。アメリカ生まれの市民の犯罪率は、不法移民の2倍以上だった… ■「国家非常事態宣言」の発令を検討 トランプ前大統領は選挙戦中に「不法移民が殺人を犯し、麻薬王が国を破壊している」と繰り返し述べ、「私が当選したら、アメリカ史上最大の大量強制送還を行う。彼らをすぐに国外追放する」といった公約を掲げ、4年ぶりに大統領への返り咲きを果たした。 強硬的な移民政策を掲げるトランプ氏は11月10日、トランプ前政権時に移民政策を担い、「数千人に及ぶ不法移民の子どもたちと家族を引き離した」と批判されたトム・ホーマン元移民関税執行局(ICE)局長代理を「国境管理責任者」に任命し、さらに18日には「大量強制送還を実施する計画の一環として非常事態を宣言する用意がある」とSNSに投稿した。 国家非常事態宣言は通常、戦争や新型コロナウイルスなどの感染症流行の際、公共の利益のために個人の権利を制限しようとする目的で発令されることが多いが、なぜ、あえて今なのか。 その裏にはトランプ氏のいくつかの思惑が透けて見える。 まずは米国がこれまで経験したことのない大量の不法移民を強制送還するにあたって、逮捕した移民を拘束する施設の規模を拡大したり、州軍と連邦軍を含む軍隊の使用を可能にしたりすることがトランプ氏にとって重要となってくる。 特に連邦軍に関しては、米国には「民間人に対して連邦軍を使用しない」という規則があるため、トランプ氏が「不法移民は民間人ではない。彼らはわが国への侵略者だ」と主張しても認められない可能性がある。そこで非常事態を宣言して大統領の権限を強化し、議会の承認など通常の手続きを経ることなく、軍隊を使えるようにしようという狙いではないかと思われる。 もう一つ考えられるのは、強制送還にかかる膨大な予算を確保しやすくすることである。