「日本文化からインスピレーションが湧くことが多い」と話すフリーデマン・フォーゲル（桐原正道撮影）

天才振付家、ジョン・クランコ（1927～73年）が世界一流のカンパニーに育てた「シュツットガルト・バレエ団」（タマシュ・デートリヒ芸術監督）の来日公演が11月（2～4日、8～10日）、東京・上野の東京文化会館で上演される。公演初日（2日）にクランコの代表作「オネーギン」のタイトルロールを踊るプリンシパル（最高位ダンサー）で、日本のファンも多いフリーデマン・フォーゲルが本公演について語った。 ■親日家 同バレエ団の日本公演は、73年の初来日から数えて12回目。フルカンパニーでの来日は2018年以来、6年ぶりとなる。同バレエ団に1998年に入団したフォーゲルも度々来日。貴公子然としたたたずまいで、日本でも人気のバレエダンサーだ。 「日本の観客はそれぞれの作品のストーリーやその背景、アーティストについてよく知っている。そして世界中の多くのバレエ団が来日しているせいか、とても目が肥えている。バレエ文化をとても大切にしている日本の皆さんは、僕にとって非常に大切な存在だ」 さらに「歌舞伎といった伝統芸能だったり、日本の小説だったり、日本の文化からインスピレーションが湧くことも多い。1年に一度も来日できないと日本が恋しくなってしまうぐらい日本が大好きだ」と公言する大の親日家でもある。 フォーゲルはバレエ団の地元シュツットガルトで父親はエンジニア、母親は主婦という一般家庭の5人兄弟の末っ子として生まれた。 「ドイツでも男の子がバレエを習うのはハードルが高いことだが、11歳上の兄がすでにバレエを始めていて、仕事として成り立つことや、バレエの素晴らしさはすでにわかっていたので、迷わずバレエダンサーの道に進めた」 ■オネーギン 今回、タイトルロールを演じる「オネーギン」は、19世紀初頭のロシアを舞台に、田舎の地主の娘、タチヤーナと都会育ちの貴族、オネーギンの愛憎を描いたプーシキンの小説に基づくドラマチック・バレエ。ドラマ性の強いバレエはテクニックもさることながら、登場人物の心情を表現する演技力が要求される。表現力を磨くため、現代アートや映画、音楽といった、さまざまなものに日々、触れるようにしているという。 「バレエというのは言語のないコミュニケーションの一形態。不自由な部分もあるが、言語を超えた表現力が必要だ。いろいろな知識の蓄えがないと、そういった表現力を引き出せないのではないか」