伝統芸能の革命児・中村壱太郎が語る“400年愛され続ける歌舞伎の魅力”「宝探しをする感覚で演目を一度見て欲しい」
舞台の沼にハマる
舞台に興味はあるけど、何を観ればいいのかわからない。そんな人のために、その道のプロたちが舞台の世界をナビゲート。多くの人々の心を掴む、舞台の面白さの秘密を教えてもらいました! 中村壱太郎さんが行っている「歌舞伎を広める活動」とは?
中村壱太郎【伝統芸能の革命児】
【宝探しをする感覚で演目を一度見て欲しい】 今でこそ、歌舞伎はハードルが高いエンターテイメントだと思われがちですが、元々は江戸時代の庶民の娯楽として生まれたもの。歌舞伎をまだ観たことのない方は、歌舞伎というとヒーロー的存在が見得を切って悪を成敗、とか、綺麗な女方が豪華絢爛な衣裳を着て、といったイメージをお持ちかもしれません。 それも歌舞伎ではあるのですが、京都・大阪で発展をとげた上方歌舞伎の中には近所で起きた商家のどら息子の殺人事件やドロドロな略奪物語など、実は庶民の生活を描いた演目も豊富。無数のエンターテイメントが存在する今の時代、お客様が劇場に足を運んでくださるのは、歌舞伎にしかない魅力があるから。 まず一つ挙げられるのは、老若男女全てのキャラクターを男性が演じているということ。伝統を守りつつ、時代に合わせて登場人物やストーリーも柔軟に変化していく。いつの時代も止まることなく時代に合わせて変化してきたことが、歌舞伎が400年間愛され続けている理由だと思います。 はじめは舞台を観て、「あの人が綺麗、格好良い」や「大道具や音楽が素敵」など、なんでもいいので気に入ったところを見つけて、自宅に持ち帰ってほしいですね。気に入ったところや興味が湧いたところを深めていくことが、歌舞伎を楽しむポイント。 僕たちも何度も観に来ていただきたいですし、何度ご覧になっても色んな発見があると思います。映像作品にも素晴らしいものはたくさんありますが、やはり劇場で、限られたお客様と作品を共有する時間というのはとても素敵な体験だと思うのです。 歌舞伎俳優のファンになる、演目でクスッとする、衣裳や劇場の美しさに息を呑むなど、きっかけさえつかんでいただければ、意外と入り込みやすいのが歌舞伎だと個人的には思います。 コロナ禍で演劇界全体が揺れる状況下で企画した、『ART歌舞伎』。伝統芸能の未来を担う新鋭として、画期的かつ型破りな企画力で行動し続ける壱太郎さんの思いとは?