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93平米あたり27人のソーシャルディスタンス。テストの回数は1週間で約400回!? PGAツアーが「健康と安全のプラン」の“中身”を発表

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みんなのゴルフダイジェスト

PGAツアー再開まで1か月を切り、安全にプレーするための準備として具体的なプランが発表された。その内容を海外取材歴20年のゴルフエディター・大泉英子が解説する。

6月11日の再開へ、安全対策を徹底している

先日、PGAツアー再開に向けてPGAツアーが現在取り組んでいる「健康と安全のプラン」についてお伝えしたが、さらに具体的な内容が先週発表された。 37ページに渡る「健康と安全のガイドライン」の文書が5月12日に選手の元に送られた。その中には「チャールズ・シュワブ・チャレンジ」の開催週の6月8日(月)に現地で選手たちが受ける広範囲な検査やスクリーニング計画も含まれており、選手たちが宿泊するホテルや旅行中に関する注意点、練習場での取り決めなどについても細かく書かれている。ツアースタッフはここ2カ月でハーバードメディカルスクールの医療エキスパートとともに、米国政府のコロナウイルス特別チームからの知識や他のスポーツ、また研究所のエキスパートの知見を元に準備を進めてきたという。 PGAツアー・シニアバイスプレジデント&チーフ・オブ・オペレーションのタイラー・デニス氏は、今回のプランについて詳細かつ細心の注意を払いながら練っているが、ツアーが安全かつ健康を保った環境で実施できない場合は、開催しないことを繰り返し述べている。また、実行する計画はツアーが開催する地域から検査機器や医療資材を奪うものではないということも伝えている。 今回のプランの根本は「ソーシャルディスタンス」であり、選手とキャディもできるだけいつもよりも距離を取り、キャディの代わりに選手がバッグに近づくことも多くなるとしている。ツアー側からはスペースに対する人数の制限について1000平方フィート(93平方メートル)に対して27人という具体的な数値も打ち出されている。また、競技後の握手やハイタッチも禁止だ。そして、フェイスマスクのような感染予防品や除菌ペーパー、消毒薬も確保し、消毒や衛生面の向上を実施すると同時にスクリーニングプランを行うという。以下に項目別にツアーが実施する安全対策をまとめてみた。 【1】検査・陽性が出た場合 具体的には、選手、キャディ、ツアーのオフィシャルは自宅から会場へ移動する前に検査プログラムへの参加が求められ、大会開催地到着次第、3段階のスクリーニング方法を実施。質問票に答え、検温し、新型コロナウイルスを診断するPCRテストを行う。そして選手たち以外も、会場に足を踏み入れる全員が敷地内に入る前に質問票の提出と検温を行う。 テストの回数は1週間で約400回とツアーは想定しており、費用については明言を控えたが、全テストに関わる費用はツアーが持つとしている。検査結果は24~48時間以内に報告できるよう目指すというが、地域の検査の負担はかけさせない方法で行うことを強調。ツアーを開催するために地域の検査の負担をかけ、地域住民のテストが行われない、あるいは遅れるようであれば問題だからだ。ツアーは自分たちで用意したもので全てまかなうとしている。 そしてもし陽性結果が出た場合、その人の最初の陽性結果から最低10日、症状が消えるか、最低24時間後に少なくとも2回の陰性結果が出るまで隔離される。ツアーと大会は、その隔離期間中のサポートも提供するという。 なお、検査結果を待つ間はソーシャルディスタンスを守って練習場で練習したり、練習ラウンドをしてもOK。もし陽性だったとしてもツアーは名前を明かさないとしている。だが、陽性だった選手は棄権しなければならず、もし予選ラウンドを終えた段階で陽性が分かった場合は、残り2日間はプレーせずに最下位の賞金をもらうことになっている。 【3】観客・プロアマ戦 ツアーが再開しても、最初の4試合(チャールズ・シュワブ・チャレンジ、RBCヘリテイジ、トラベラーズ選手権、ロケットモーゲージクラシック)は無観客で行う予定だが、その後の観客の入場に関してはまだ決定されていない。プロの家族も来場は許されず、選手もインストラクターやキャディ、コーチまたは通訳者など限定されたスタッフしか帯同できない。クラブハウスへのアクセスも、検査でクリアになった者のみ許可される。 現在、無観客決定4試合後に開催予定のメモリアルトーナメントでは、観客の入場に備えてギャラリーバッジにチップ(RFID)を埋め込み、ギャラリーがどこにどのくらい集まっているのかを把握、ソーシャルディスタンスを保つための施策を検討しているという。個人情報ではなく、あくまでもバッジホルダーがどこにいるのか、を把握するためのものであり、人が集まりすぎている場所があれば、スタッフが注意を促すということらしいが、チップ入りのチケットは実は4年前から実施されていたという。たまたまだが、昨今のコロナ時代にはぴったり合致した手段となりそうだ。他の試合も、この「メモリアルモデル」を参考に、チップ入りのチケットを作成してギャラリーの集まり具合を把握する試合も出てくるだろう。 また、メディアに対しても制限があり、1対1のインタビューは禁止。全てのメディアセッションは、通常メディアセンターにあるインタビュールーム内ではなく、ツアーが定めたフラッシュエリア(インタビューエリア)にてソーシャルディスタンスを保って行われる。普段はロープ内での取材が可能だが、ロープ外のみとなり、クラブハウスや練習場内へのアクセスも不可だ。また、私のような米国以外に在住する海外メディアに対しては、今のところ取材が許可されていない。開催地域の規則によっては取材を受け入れてくれる場所もあるかもしれないが、少なくとも再開1戦目のチャールズ・シュワブ・チャレンジに関してはNOだ。 なお、大会前に行われるプロアマ戦は中止だ。 【3】選手の宿泊や移動 選手は指定ホテルへの滞在が推奨されているが、キャンピングカーで遠征している選手やレンタルホームに宿泊したい、という選手に対しても衛生面での注意点を配布し、許可するという。大会間の移動については、選手とキャディの最大170名が搭乗できるチャーター便を出す(チャーター機に搭乗する前に検査がある)。コーテシーカー(選手用に用意された車)は各大会によって決定されるが、乗車をシェアするサービスは許可しないという。さらに夕食に関してもレストランに行く代わりにテイクアウトで済ます、という方法を推奨。遠征先でもできるだけ自宅にいる時と同様に、人ごみを避け、外出を控える、というスタイルを取るよう、要請されるようだ。 【4】マスクの着用 マスクは除菌シートや消毒薬同様、現地で配置・供給されることになっているが、マスクをつけるかつけないかは選手とキャディの判断に委ねられるという。そして開催地によっては、マスク着用が義務付けられることもある。 全米のプロスポーツに先駆けて再開するPGAツアー。先日行われたコロナウイルスの救済活動の寄付金を募るチャリティイベント「テーラーメイド・ドライビングリリーフ」では、大統領の立場でありながら、ドナルド・トランプ氏が生中継中に電話インタビューで登場したというが、それだけアメリカはスポーツの再開に力を入れているという証だろう。チャールズ・シュワブ・チャレンジでの再開成功が、今後の全スポーツ界のカギを握っていることは間違いない。

大泉英子

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