ストーカーから命を守るには? 洋菓子店員殺害事件から考える、わたしたちにできること
自分がもし、交際相手とトラブルになったら。身内や友人が、ストーカーや配偶者からの暴力におびえていたら。しばらくの間、相手が何も危害を加えてこなければ「放っておいても大丈夫」「時間が解決する」などと思うかもしれない。だが、それでは何の解決にもならない。 東京都中野区のアパートで8月、洋菓子店店員野口麻美さん(38)が、元交際相手で別の洋菓子店店長の男(34)=直後に自殺=に殺害された事件。男の暴力やストーキングについて、警察は野口さんから相談を受けていたが、野口さんの申し出を受け、今年4月で対応を終えていた。ストーカー規制法施行から20年がたった今も、こうした事件は絶えない。被害はだれにでも起こり得る。人ごととは思えない。どうしたら最悪の事態を防ぐことができるのか、両親との対話を重ね、専門家の声も聞きながら考えてみた。(共同通信=渡具知萌絵) ▽インスタグラム投稿後の凶行 「閉店のお知らせ。…私が元交際相手野口麻美から多大なる嫌がらせを受け…僕はどうしようもない憤りから彼女を許すことができず…人生に悔いはないです。本当にありがとう」
8月30日朝、写真共有アプリ「インスタグラム」にこんな投稿がされた。アカウントは世田谷区のある洋菓子店。投稿を読んだ野口さんの弟は、ただならぬ文面に姉の身を案じた。この洋菓子店長は、姉のストーカーだったと聞いていたからだ。姉の自宅アパートに駆け付けると、姉は寝室の床で血を流して倒れていた。「もう助からないかもしれない」。 電話を受けた両親は、長野県の自宅からすぐに東京へ向かった。男との関係に思い悩み、自殺を図ったのではないか―。両親はとっさにそう思った。だが、警察は刺殺事件と説明。2人は「何が何だかわからなくなった」。 事件の概要は10月になって明らかにされた。警視庁野方署は殺人などの疑いで男を容疑者死亡のまま書類送検。送検容疑の詳細はこうだ。 8月30日未明、脚立を使って野口さんの住宅のベランダに上がり無施錠の窓から侵入。包丁で頭や背中を刺して殺害した、としている。司法解剖の結果、野口さんは全身計23カ所を執拗に刺され、背中の傷が肺まで達していた。