川谷絵音「indigo la Endは“奇跡のバランス”」干渉しないからこそいい!? バンド内の関係性の秘密
川谷絵音さんが中心となり、2010年に結成されたindigo la End。2020年に結成10周年を迎えたが、彼らの進化が止まらない――。2019年にTikTokから若い世代を中心に『夏夜のマジック』がデジタルヒット。新曲がリリースされるたび最高再生数を更新し、新たなファン層が拡大している。 そんなますます注目を集めるindigo la Endが約1年4ヵ月ぶりに、通算7枚目となるフルアルバム『夜行秘密』をリリース。アルバムタイトルに“夜”が入るのは、インディーズ時代にリリースされた1stフルアルバム『夜に魔法をかけられて』以来。バンドならではの人間力溢れるサウンドや、躍動感のあるアンサンブルから、さまざまな夜の恋模様を体感できる作品だ。 今回、リリースを記念しメンバーにインタビューを実施。全3回にわたりお届けする。with初登場ということで、初回はバンド内の関係性について。これまで数回メンバーの入れ替えを経て、2015年より現在のメンバー体制に。それぞれ加入を決めた理由、そして“本音でぶつかり合うような関係性じゃない”からこその良さとは?
indigo la Endは“奇跡のバランス”で成り立っているバンド
――ゲスの極み乙女。やジェニーハイとしての活動をはじめ、プロデュース業や楽曲提供、ソロプロジェクトなど、多岐にわたってご活躍されている川谷さんですが、音楽家としてのキャリアのスタートはindigo la Endです。結成当初、ギタリストとドラマーをmixiで募集したんですよね。 長田カーティスさん(ギター/以下敬称略) 僕は結成当初からのメンバーなんですが、絵音くんがmixiに出していたバンドメンバー募集のところに、「レディオヘッド」「the band apart」「ゆらゆら帝国」って書かれていて。好きな音楽が似ていると思って、それでメッセージを送ってみたら……ここまで続いてしまいました(笑)。 川谷絵音さん(ギターボーカル/以下敬称略) スタートが友達じゃないからこそ、本音でぶつかり合うような関係性じゃないんですよ。いい意味でドライというか。長田くんはmixi、その後加入した後鳥さんと栄太郎はそれぞれ別のバンドに所属していた頃に対バンで知り合ったから、音楽のなかで関係性を築いたところが大きくて。 長田 友達だとケンカになるところがならないっていうかね。距離感が程良いんです。仲良くないってよく言われるんですけど、そんなことは――。 川谷 いや、僕ら「仲が良くない」で売ってるんで(笑)。 佐藤栄太郎さん(ドラム/以下敬称略) 楽屋も一人ひとり別だしね。 後鳥亮介さん(ベース/以下敬称略) いや、嘘はだめなのよ(笑)。一緒の楽屋ですし仲が悪いわけではないです(笑)。 ――(笑)。後鳥さんは2014年、佐藤さんは2015年にそれぞれご加入されましたが、indigo la Endの音楽に惹かれたということですね。 後鳥 長田くんのギターも好きだったし、歌もすごくいいなと思っていました。ずっとサポートとしてベースを弾いていたので、まさか正式メンバーに誘ってもらえるとは思ってもみなくて。ステージ上で絵音くんに「正式メンバーになってよ」と言われたときは動揺してしまって(笑)。その後、感謝しながら加入を決めました。 川谷 そういえば後鳥さんにサポートでベースを弾いてほしいってお願いしたの、下北沢のファーストキッチンだったよね。 後鳥 そうそう。その集まりに長田くんがめちゃくちゃ遅刻してきたんですよ。しかもやっと来たと思ったら、「うっすうっす」って超軽い感じで(笑)。 長田 あー、もう最悪ですね(笑)。まあ、所詮僕は音の出るゴミなので……。 一同 (爆笑) 佐藤 「音の出るゴミ」……!?(笑) 川谷 withでそんなこと言わないでよ(笑)。 佐藤 2021年の名パンチラインが生まれたね(笑)。話を戻すと、僕は別のバンドでindigo la Endと対バンしてツアーを回って、そこから2~3年交流がなかったところで声を掛けてもらって。実はちょうどその頃バイトしながら音楽をやっていて、就職しようか悩んでいた時期だったんです。だから僕を憶えてくれていたことも、必要としてもらえることも、すごくうれしくて。僕がindigo la Endのドラマーに相応しいかどうかは、入ってから僕が頑張ればいいだけの話だから、加入に迷いはなかったですね。 ――それこそTikTokで大きく注目を集めた『夏夜のマジック』は、佐藤さんが加入して最初の作品であるシングル『悲しくなる前に』の収録曲です。indigo la Endの楽曲の幅が広がったのは、佐藤さんの加入が大きいのではないでしょうか? 佐藤 それまでのindigo la Endは『夏夜のマジック』みたいな曲をやってきてはいなかったので、聴いた人からは「ドラムは間違いなく打ち込みだ」と言われたりもして(笑)。でもそれまでバイトしながらインディーズシーンでドラムをやっていた人間が、いきなりメジャーアーティストとして活動していくことになったので、ショック……とまでは言わないけれど、ギャップは大きかったんですよ。加入してからそれまでにないくらいの努力をしましたし、しんどいことも多かったからこそ頑張れたのかなとも思いますね。 ――indigo la Endの楽曲は、楽曲の物語の空気感を投影していることはもちろん、メンバーさん各々の色がしっかり存在したうえで調和が取れていると思います。 川谷 ほんと、この4人は奇跡のバランスで成り立っている感じがしますね。6年もこのメンバーでやっているので、経験則から「こういう感じで作っていったら良くなるだろうな」というのが感覚でわかる。もし全員プライベートまで仲良くて、全員同じ音楽を聴いていたら、産み出されるものも1色になってしまうかもしれない。でも、干渉しないからこそ4人がそれぞれのフィールドでインプットして、それぞれがindigo la Endでアウトプットできているからこそ、ちゃんと4色存在しているんだと思います。