中国、日本人短期ビザ免除再開 トランプ政権発足にらみ4年半ぶりに動くも安全に懸念
【北京=三塚聖平】中国は30日、観光やビジネスで訪中する日本人に対する短期滞在のビザ(査証)免除措置を約4年半ぶりに再開した。日本との貿易・経済協力の拡充につなげるほか、トランプ次期米政権の発足を前に対日関係を安定させる狙いがある。ただ、邦人拘束など安全に関する懸念が増しており、日本人の訪中がどこまで拡大するかは不透明だ。 30日昼、北京首都国際空港には日本からの到着客らの姿があった。中国に単身赴任するという日系企業の男性(44)は「ビザ免除になると日本から家族や知人が来やすくなる」と歓迎した。 来年末まで30日以内の短期滞在のビザなし渡航が可能となった。中国は、日本に15日以内の短期滞在のビザなし渡航を認めていたが、2020年3月に新型コロナウイルス禍を受けて停止していた。 日中関係筋は、免除再開を「サプライズだった」と受け止める。日本の経済界が再開を要望していたが、中国政府は訪日する中国人にも同様に免除する「相互主義」を新たに求めて再開に応じていなかったからだ。日本は中国人へのビザ免除を受け入れず、中国側の一方的な再開となった。 中国が再開に応じた背景には、景気低迷で外資の対中投資を必要としていることに加え、来年のトランプ政権始動をにらんで米国の同盟国などとの関係改善を進めていることがある。 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報で編集長を務めた胡錫進(こ・しゃくしん)氏は11月下旬に交流サイト(SNS)の投稿で、対日ビザ免除は日中民間交流を促進すると指摘。その上で、米国の政治エリートが日中関係の緊張を望んでいると主張し、「中国人も日本人も米国に〝漁夫の利〟を与えてはならない」と今回の措置を契機とした日中接近に期待した。 ただ、日本からの訪中が急増するという状況にはなっていない。反スパイ法による日本人拘束や、広東省深圳の邦人男児刺殺事件といった安全に関する懸念の高まりも影響している。 一時帰国から北京に戻ったという在中日本企業幹部は「乗客の大半は中国人で、日本人はあまりいなかった」と話す。全日本空輸(ANA)の中原伸二・執行役員中国総代表は「ビジネス需要は来春に向けて少しずつ回復していき、旅行需要はその次になるのではないか」との見方を示す。