磯村勇斗「憑依も大切かと思いますが、僕はそれ以上に俯瞰を大事にしています」──映画『若き見知らぬ者たち』
「さまよっている最中です」
先に挙げた作品以外にも、宮藤官九郎が脚本を務め、ブームになったテレビドラマ「不適切にもほどがある!」や、村上春樹の小説を独自解釈でアニメ化した『めくらやなぎと眠る女』、Netflixシリーズ『ソウルメイト』(配信日未定)ほか、野心的なラインナップが並ぶ。順風満帆な道のりにも思えるが、本人はこれまでどんな悔しさをおぼえ、乗り越えてきたのか。 「僕は『仮面ライダーゴースト』(15)を経てすぐNHK連続テレビ小説『ひよっこ』(17)に出演させていただきましたが、あの頃は現場に入っても知らないことも多く、カメラが5・6台あるなかで芝居するのはどういうことか等々、様々なプレッシャーを感じていました。 また、僕自身の芝居も凝り固まっているといいますか、どこかカッコつけてしまっていたんです。演出の方に“そういうのはいらない”と言われたこともありました。個人的に演技のことを話し合ったりトレーニングを積んだりしましたが、当時は“自分は全然ダメだ”とすごく落ち込んでいましたね。ただその期間に、自分の中で徐々にいらないものを削ぎ落とす試行錯誤を行ったことで色々なことに気づけました」 キャリアを重ねていくなかでそうした悔しさは減ってきたのか?と問うと、彼は静かに頭を振った。 「芝居におけるリアリティやリアリズムとは何だ?と日々悩んでいます。映画はフィクションですから、リアルを追求しすぎてもダメだし、かといって真実味を感じられなければ心には響きません。ただリアルにやれば正解というわけでもなく、ニュアンスが乗っているほうがシーンが生きるときもありますから、とても難しいです。自分たちがフィクションとリアリティという矛盾のなかで試行錯誤しながらものを作っていることを痛感する日々です。“このセリフはどう届けていくべきなんだろう”“でもそれを考え過ぎたらリアリズムじゃないんじゃないか”──こうした悩みを、役者は常に抱えている気がします」 「自分はいまどこにいるのか、さまよっている最中です」と、悩みを隠さない磯村はさらに続ける。 「悩んでいるときは辛かったり、考えるのをやめようかと思うときはありますが、悩みぬいたシーンが無事に終わるとやっぱり楽しいなと思ってしまいます。クリエイティブの場は面白い!と感じることは多々あります」 目の前の壁を悲観はしていない。これもまた、彼にとっては“芝居の奥行き”を形作るピースの一つなのだろう。 「憑依も大切かと思いますが、僕はそれ以上に俯瞰を大事にしています。どれだけ入り込んでもいいけれど、絶対に一人客観的に見る自分を置いておきたいという考えを持っています。役者をやっていくうえで“引いて見る力”は必要なものだと思いますし、先輩方からもそうアドバイスいただくことも多くあります」
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