磯村勇斗「憑依も大切かと思いますが、僕はそれ以上に俯瞰を大事にしています」──映画『若き見知らぬ者たち』
磯村勇斗「役を生きる」
心身を役に捧げて、ゼロ距離にしていく作業。その道程は険しく、途方もないものだ。それが「役を生きる」ということなのだろう。ただ、その辛苦の中でしか生まれない芝居、到達できない領域がある。 『若き見知らぬ者たち』でも象徴的な場面がある。自転車をこいでいる最中に車と接触してしまうのだが、彩人はドライバーに罵倒されるままじっと耐え忍ぶ。「あれは怒りなどの“感情を抑えている”以前に、もうエネルギーが出ませんでした。理不尽な状況に対して立ち向かう力がない状態で」と、語っていたが、これは磯村自身の実感でもあろう。 「ただ、それで体を壊してしまっては本末転倒になってしまうので、信頼できるトレーナーさんにサポートしてもらっています。食事制限しながらも、何を摂っていれば最低限の集中力を保ちながら良いパフォーマンスを出せるのか、教えていただきながら取り組んでいます」 闇雲に取り組むわけではない。自身も短編映画の監督にチャレンジしたり、地元で映画祭を主宰する彼は、主演俳優としての立場と責任を重々承知したうえで、ギリギリを見極めている。 本人は「トレーナーさんを入れずにやりすぎて“身心が壊れちゃうな”と思ったときがあり、そういった部分と向き合いながら作らないとプロじゃないなと考えを改めました」と語るが、それでいて安牌な役柄ではなく、難役に挑み続ける姿勢には頭が下がる。 思い返せば、『月』でのインタビュー時に磯村はこう語っていた。「僕自身が(役に)潜りたいタイプなので、最初は潜ろうとしてみたんです。でも、その途中で危険を感じて、引き返しました」と。彼自身は役への共感や共鳴、或いは距離感をどう捉えているのか。 「どこか共感する部分があると役を掴みやすいところはありますが、必ずしも共感が必要かといえばそうではないと思っています。ただ、“全くこいつには共感できない”という役であっても、向き合っていくうちに共鳴する瞬間もあるのがこの仕事の面白さです。気づかないところで共鳴しているときもあるし、それこそ『月』のように掘っていったら共鳴してしまうから止めた、というお話にもつながりますが、どれだけ出すか出さないかをコントロールするのが僕たちの仕事であり、監督が最終的に調整するものでもあるかとは思います」
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