梅沢富美男、「怒っちゃダメですよ」待機時間中、大女優が魅せたあるべき姿
娘の彼に一言だけ、言わせてもらった
ーー 梅沢さんは娘さんと仲良くやっていますか? 梅沢:実は、長女が婚約しましてね。「彼氏と会って欲しい」と言われたときは、ちょっと複雑な心境でした。初めての経験ですからね。あんなに小さくて、「パパ、パパ」と言っていた娘に、男ができたんですからね。 でも、彼に会ってみたら、好青年だったので許しはしましたが、娘は彼と大学を卒業してすぐにつきあい始めていたんです。大学を卒業して、これから社会勉強をさせてと思っていましたからね。だから、「娘が幼いとか、何もできないとかいう台詞を吐くようなら、今のうちに別れてくれ」と、父親として、一言だけ言わせてもらいました。もちろん彼は、「そんなことはありません」って言ってくれましたけれどね。 それはこの映画のなかで、ジョーの父親が恋人であるギャングの情婦に言った台詞と同じで、思わずドキッとしました。
撮影の待機中、大女優からのまさかのダメ出し
ーー舞台では女形として活躍していらっしゃいますが、演技やしぐさ、態度などで影響を受けた方はいらっしゃいますか? 「女優というのはこうあるべきだ」と感じたのは、松坂慶子さんですね。それまでに僕が何回か一緒にドラマを撮っていたチームでのロケのときに、照明待ちだとか、カメラ待ちだとか、スタンバイがあまりに長かったので、「ぐずぐずしないでさっさとやれ」って言ったんです。松坂さんをそんなにお待たせしちゃいけないと思いましたからね。 しかし、松坂さんがおっしゃったんです。 「梅沢さん、怒っちゃだめですよ。映画でもテレビでもドラマでも、待ち時間はつきものです。だから、私の人生の三分の一は待ち時間かもしれません」 深いなぁと思いました。おっしゃるとおり、映画の撮影は待たされることが多いんですね。それでも彼女は、一切文句言わないんです。
僕らの時代の俳優さんの気質を持っている若手
ーー今の芸能界でライバルだと思えるような俳優はいますか? 僕は、テレビのバラエティー番組にもドラマにも出ていますけど、テレビならテレビ、映画なら映画、バラエティーならバラエティーと、それぞれ専門も質も違いますから、ライバルとはいわないと思っています。僕の場合は、あくまでも舞台役者ですしね。 ライバルとはちょっと違いますけれど、最近、感心したのは、俳優の綾野剛くん。若手俳優さんの中では注目度ナンバーワンですね。彼とちょっと話す機会があったんですけどね。若いけれど、例えば、西田敏行さんなど、僕らの時代の俳優さんの気質を持っていて、これから大きく伸びていくいい俳優さんだと思いましたね。 彼が出演するいろいろなドラマ、演じる役をぜひ見てください。どんな役も全部色を違えて演じきれる役者さんだと思いますよ。 (取材・文・撮影:たなかみえ) ■梅沢富美男(うめざわ・とみお)1950年11月9日生まれ。福島県福島市出身。剣劇一座「梅沢劇団」の創設者で花形役者の父・梅沢清と娘歌舞伎出身の母・竹沢龍千代の間に8人兄弟の五男(7番目)として生まれる。1975年頃から女形を演じ、「下町の玉三郎」として人気スターに躍進。歌手としては1982年に『夢芝居』が大ヒット。芝居のほか、テレビドラマやバラエティー番組などに多数出演中。 『夜に生きる』5月20日(土)丸の内ピカデリー 新宿ピカデリー他全国ロードショー