鹿島・竹中・清水建設が手を組んだ…異例の連携は「3K」を払拭できるか
【異業種・新興と協業】次世代オフィス・スマート都市共創
関西エリアで実証・実装を行う「COT-Lab グランフロント」 竹中工務店はオープンイノベーション拠点「COT―Lab(コトラボ)」を相次ぎ設置している。他産業の大手企業やスタートアップとの協業の場として、技術・事業開発によりデジタル変革(DX)への対応や脱炭素社会への転換など社会課題を解決するのが狙い。都内と大阪に技術者を中心とした10人程度を配置したサテライト拠点三つを設置。変化が激しい建築産業の中で、短期間で先端技術の開発を推進する。海外の研究拠点でも展開を目指す。 建築分野に特化する竹中工務店の村上陸太常務執行役員は「建築は生活空間を提供しておりニーズは多様で変化が激しい。前に出て研究開発を進める必要がある」と話す。 同社は2019年、研究中核拠点である竹中技術研究所(千葉県印西市)の改修に伴い「COT―Lab 竹中」を設置。建設の基礎領域に加え、未来先端・環境社会の領域で専門人材を配置する。ここでは社外へのビジョン発信や共創パートナーとのマッチングが主な役割で、大企業の共創にスタートアップと連携を進めている。 COT―Lab 竹中のサテライト拠点、第1号が「COT―Lab 大手町」。東京・大手町ビルのビジネスイノベーションスペース「インスパイアード ラボ」に設置。健康志向や屋内サービスロボットの活用を目指した革新的なまちづくりをテーマとし、同ラボに入居するスタートアップや大企業、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアを対象に活動する。店舗データや人流データ、購買データなどから生まれる価値を顧客に提供する仕組みづくりを目指す。協業によりデータを増強し、より多くの情報提供することで付加価値を高める。 「COT―Lab 新橋」は1932年に完成し、先頃シェアオフィスとして生まれ変わった東京・新橋の一等地に建つ「堀ビル」に入居する。竹中が歴史的建築物を有効活用する「レガシー活用事業」の事例でもある。ここでは次世代オフィスの創造・展開に関する技術や事業の開発がテーマ。例えばコクヨ、グッドルーム(東京都渋谷区)などとワークショップを行い、在宅を含めた分散型オフィスのあり方など直面する課題解決を探る。 また大阪の「COT―Lab グランフロント」では、グランフロント大阪(大阪市北区)内に入居し、関西のスマートシティー構想に参画し、関連技術やサービスの実証・実装を推進する。スマートシティーに求められるデジタル技術を駆使した利便性に加え、脱炭素や健康の効果を得られる空間創出に向けて共創・実証を推進し、関連の情報を発信する。産学連携による建物やまちのアプリ開発を促進し、人とロボットが共創する未来社会の実現を目指す。 相次ぐサテライト拠点の設置について、村上常務執行役員は「社会課題の解決につながる技術開発や事業開発は、社内の視点・体制だけでは十分でない」とその役割の重要性を説く。また、日欧米などに設置する「GRIT」は海外の最先端技術を持つスタートアップの探索とチャンネルを構築する拠点だが、米シリコンバレーなどをはじめ、独、シンガポールでもCOT―Labの設置を目指す。グローバル展開で優位に進める狙いもある。
日刊工業新聞・山下哲二