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現代家族の在り方を問う「連続ドラマW 坂の途中の家」の観るべきポイント!【レコメンW】

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MOVIE WALKER PRESS

映画並みのスケールと、海外ドラマばりの中毒性…そんなドラマ、観たくありませんか? WOWOWが贈るオリジナルドラマには、映画ファンや海外ドラマファンが、日本のテレビドラマに感じてきたであろう“物足りなさ”を払拭するような作品が目白押し。 【写真を見る】乳児を虐待死させた水穂に自分を重ねてしまった里沙子に起きる異変とは!? この連載企画「レコメンW」では、映画ファンの代表として映画プラットフォーム「MOVIE WALKER PRESS」の編集部、海外ドラマファンの代表として雑誌「DVD&動画配信でーた」の編集部がタッグを組み、必見のWOWOWのオリジナルドラマをレコメンドしていきます。 「日本のドラマはあんまり…」と思っている映画ファンも、海外ドラマファンも、この連載を読めばWOWOWのオリジナルドラマの魅力に気づくこと間違いなし。最終回となる今回は、「DVD&動画配信でーた」編集部の杉原が「連続ドラマW 坂の途中の家」(全6話)の必見理由をご紹介します! ■WOWOWのオリジナルドラマ「連続ドラマW」って? WOWOW独自のドラマ製作プロジェクトとして2003年にスタートした長編ドラマ枠「ドラマW」。市川崑監督や大林宣彦監督ら日本映画界のレジェンドたちが手掛けた作品は大きな話題を呼び、2008年からは連続ドラマ枠「連続ドラマW」の製作も開始。濃密な人間ドラマから骨太な社会派ドラマ、映画スケールのアクションや本格ミステリーなど幅広いジャンルの作品を次々と生みだし、これまで「東京ドラマアウォード」や「日本民間放送連盟賞」など数多くの賞を受賞している。 ■今回レコメンドするのは「連続ドラマW 坂の途中の家」 「紙の月」「八日目の蟬」「愛がなんだ」など数々の作品が映像化されている直木賞作家・角田光代。人気作の中でも、“家庭に潜む究極の心理サスペンス”と称賛された同名小説をドラマ化したのが「連続ドラマW 坂の途中の家」だ。乳児虐待死事件の補充裁判員に選出された主婦が、自らも幼い子供を持つ母親として、いつしか被告に自分自身の姿を重ねていく。子育てに奮闘する女性が直面するさまざまな重圧やストレス、苦悩が描かれると共に、裁判を通し、“家庭”という閉ざされた世界に隠された衝撃の事実が浮かび上がっていく…。 主演を務めるのは、柴咲コウ。2017年の大河ドラマ「おんな城主直虎」をはじめ、映画やドラマなどで幅広く活躍する彼女が、3歳の娘を持ち、子育てで人知れず悩み、次第に平常心を失っていくヒロインの里沙子を好演。夫には田辺誠一、優しくも無言のプレッシャーを与える義理の父母に光石研、風吹ジュン、また里沙子の実の母に高畑淳子、そのほか水野美紀、伊藤歩、眞島秀和、倍賞美津子など実力派キャストが集結。「紙の月」のドラマ版でシナリオを手掛けた篠崎絵里子が脚本を、『さんかく窓の外側は夜』(’21年1月22日公開)などの新進気鋭の映像ディレクター、森ガキ侑大が監督を務めている。 ストーリーを紹介しよう。山咲里沙子(柴咲コウ)は、3歳の娘・文香を育てる平凡な主婦。ある日、里沙子は同世代の主婦・安藤水穂(水野美紀)が生後8カ月の娘を浴槽に落として虐待死させた事件の裁判の補充裁判員として参加することになる。当初は我が子を手にかけた水穂に嫌悪感を抱くが、裁判を通して被告の人生に自分を重ねるようになった里沙子は自分自身を失っていく。そんな里沙子を夫の陽一郎(田辺誠一)は心配しながらも、何気ない言葉で彼女を傷つけていく。さらに、裁判に出席するため義理の両親に預けた文香が全くいうことを聞かずに声を荒げ、周囲から虐待を疑われてします。やがて里沙子は自分の中にある感情が眠っていたことに気付く。 裁判員制度を題材にしながら、子供の虐待死事件を通して母性、夫婦、家族、そして子育てを巡る社会の在り方を浮き彫りにするヒューマン・ドラマ。決して他人事では片づけられない物語を描く本作の3つの見どころを、共通する要素を持つ海外ドラマと絡めてレコメンドしていこう。 ■レコメンド1 母と娘の愛憎劇 今回レコメンドを担当する「DVD&動画配信でーた」編集部の杉原は、「原作が角田光代さんと聞いて、とても興味を持ちました。映像化された『紙の月』『八日目の蝉』を観ているのですが、角田光代さんの作品は登場人物たちの心理描写が繊細で、人間関係もリアルに描かれる。本作も主人公の里沙子と、夫の陽一郎や彼の両親との何気ない日常が描かれますが、どこの家庭でも見るようなやり取りの中で、子育てに悩む里沙子に放つ心ない一言には、胸が痛くなりました。特に里沙子の実の母親が強烈でした」と語る。そんな杉原が、共通する魅力を感じる海外ドラマとして挙げたのが、「シャープ・オブジェクト KIZU-傷-:連続少女猟奇殺人事件」だ。 「このドラマは、デヴィッド・フィンチャー監督作『ゴーン・ガール』の原作者ギリアン・フリンのデビュー作で、女性記者が過去のトラウマと闘いながら連続少女殺人事件を追うサスペンスです。事件の真実に迫る一方で、ヒロインの心の闇も明かされていくのですが、そこが『連続ドラマW 坂の途中の家』を彷彿とさせます」。主演は、数々のヒット作で知られるハリウッド女優エイミー・アダムス。「シャープ・オブジェクト~」では、独裁的で過保護な母親に育てられ、トラウマを引きずることになったという役どころだ。 「『連続ドラマW 坂の途中の家』でも里沙子が価値観を押し付ける母親に育てられたことが、彼女が抱える心の闇と関係しています。彼女の実母役を高畑淳子さんが演じていますが、ハマり役です。結婚してもなお、娘を支配しようとする毒親ぶりには恐怖を覚えました。娘を思っているからこその言動なのですが、それが原因で里沙子の母親への憎悪は膨らみ、さらに自分を見失っていく。愛憎入り乱れた母娘の関係に引き込まれました」。 ■レコメンド2 裁判の裏側に焦点を当てた法廷劇 見どころの2つ目は、裁判員制度に焦点を当てた法廷劇だということだ。無作為に選ばれた一般人が、育児疲れの果てに母親が起こした虐待死事件を裁く。裁判員の顔ぶれは補充裁判員である里沙子をはじめ、子育てが終わった初老の男性や女性、独身男性もいれば、家族を抱えるサラリーマンなどさまざま。そんな彼らが、被告の夫や義母、実母、夫の元恋人の口から語られる事実を検証して被告人の水穂を裁く。 「公判後に、裁判官たちと別室に集まった裁判員たちがその日聞いた証言からそれぞれ感じた印象を話すのですが、往年の名法廷劇『十二人の怒れる男』を思い出しましたね。法廷で証言を聞いた裁判員それぞれで共感したり拒絶したり、被告人やその家族の印象が異なっているのがとてもリアルでした。裁判の裏側が見えて、すごく興味深かったです」。 そんな裁判の舞台裏を題材にしている点で、杉原が推したのが海外ドラマ「BULL/ブル 心を操る天才」。天才心理学者のブルがさまざまなジャンルのプロを率い、独自の裁判科学で無実の被告を救う。アメリカで実在する訴訟アナリストをモデルにした異色の法廷劇だ。「陪審員裁判は人の印象が大きく判決に左右しますが、『連続ドラマW 坂の途中の家』でも、証人の証言や事件への向き合い方で里沙子をはじめ、裁判員たちの被告に対する心象が変わっていく過程が描かれる。裁判員制度の難しさはもちろん、そもそも人が人を裁くことの難しさも考えさせられます」。 ■レコメンド3 悩みを抱えた女性たちの群像ドラマ 子育てを巡って悩むのは、ヒロインの里沙子、被告の水穂だけではない。裁判官の朝子(桜井ユキ)は共働きの夫と共に幼い息子を育てながら、裁判官としてのキャリアも大切にしたいと考えているが、夫が子育てにイマイチ協力的ではない。裁判員に選ばれた六実(伊藤歩)は女性誌の編集長としてバリバリ働き、広告代理店勤務の夫とは理想の夫婦のようだが、不妊に悩み、そのことを知らない部下(子育て中の母親)から心ない言葉をぶつけられるなど、さまざまな悩みを抱える女性たちが登場する本作。同じように女性たちの群像劇として、杉原がチョイスしたのは英国ドラマ「ミストレス」だ。 「このドラマは、仕事、恋愛、家族などを巡って苦悩する40代女性たちの群像劇です。BBCでシーズン3まで製作され、アメリカ、ロシア、韓国、そして日本でもリメイクされ、自分らしい生き方を模索する女性たちに共感できるポイントが多いんです。『連続ドラマW 坂の途中の家』も、母であるがゆえ、妻であるがゆえに生きづらい思いをしている女性たちが多々登場し、それぞれがもがきながら、自分の道を探そうとする。思わず自分を重ねたくなる人もいるのではないかと思います。裁判を通して、ヒロインの里沙子は何を得るのか。最後の最後まで見逃せません」。 最後に杉原は「結婚や子育ては多くの人が歩む道だと思います。でも、家族になること、母親になることって本当はすごく難しい。そこには人それぞれに悩みを抱えて、喜びや悲しみ、孤独や嫉妬などいろんな感情が渦巻いているのだと、この作品を観て改めて痛感しました」と振り返った。 実の子を殺した水穂に共感を覚えてしまう里沙子は異常なのだろうか。「普通の母親ならそんなことはしない」と里沙子の夫が言うように、多様性の時代と言われながらも、「普通」という言葉で人と同じであることを求められてしまう現代。本作は子育てを通して、「普通」の結婚、子育てとは何かに踏み込み、その答えを観る者に問いかける。 「連続ドラマW 坂の途中の家」(全6話)は、2021年3月31日までWOWOWメンバーズオンデマンドにて配信中。 文/前田かおり

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