「自助」と「不介入」の時代に問われる日本の針路|9・11から20年:絶対の「自由と民主」が去った世界で
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2021年8月15日のアフガニスタンの首都、 カブールの陥落 は大きな驚きと恐怖の念をもって、世界に受け止められた。一部の専門家の間では、同年春頃からアシュラフ・ガニ大統領が率いるアフガニスタン・イスラム共和国が危機にあることが伝えられ、欧州諸国の一部は米軍撤退の可能性を見据えて自国の外交官や派兵した部隊をどのように撤退させるべきかを、水面下で検討していた。 日本の場合は、アフガニスタンの平和構築や治安維持のために自衛隊を派兵していたわけではなかった。一般的に言えば、文民の外交官は治安の悪化した任国では自己防衛をするための手段が備わっていないので、安全な首都、あるいは厳重な警備と防護柵を備えた大使館からほとんど動けない。駐アフガニスタンの日本大使館も同様だと聞いた。他方、治安維持のためにより広い範囲で行動する武装した兵士たちは、現地の警察や軍隊との情報交換などからも、より広範なインテリジェンス情報に接する。平和国家の代償として、日本は対外インテリジェンス情報の収集において、欧州諸国や、オーストラリア、カナダ、韓国などと比べても、大きく劣る場合が多いのは、それ故である。 ともあれ、このカブール陥落と、その後の米軍のそこからの撤退は、大きく歴史が動いた象徴として語られることになるだろう。だとすれば、これからの時代が、それまでとどのように変わっていくのかを想定することは無意味ではないであろう。
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細谷雄一