俳優・小林涼子、経営者との両立を支える「美味しいをいつまでも」の思い #豊かな未来を創る人
みんなの「得意」が社会を支える
── 農福連携の事業をする中で大切にされている考え方や信念を教えてください。 「得意を生かす」ことをすごく大切にしています。人にはみんな、得意なことと不得意なことがあります。私は子どもの頃から今まで、俳優として得意なことを仕事にできていますが、子どもの頃はずっと母に支えられてきましたし、今はマネージャーさんや作品に関わる人たちが私にはできないことを補ってくれるからこそ仕事ができています。 そうして周りの人のおかげで得意を生かせて今の仕事をしているけれど、もし得意じゃないことに目を向けられていたら、今こうして仕事ができていないかもしれないと思うんです。だから、できないことに目を向けるのではなく、できることに目を向けられるような会社にしたいと考えています。
── 会社の中で、得意を生かしている事例があれば教えてください。 会社を作った当初はファーム事業しかしていなかったのですが、ファームで働く障がい者の方で、絵がすごく上手な人がいて。その方はタブレット端末の操作やメールの文書を打つことが難しかったのですが、ほかに得意なことがあるんじゃないかとお話を重ねたところ、「実は絵が得意なんです」と教えてくださったんです。それで、農園をテーマに絵を描いていただいたら、本当に可愛い作品を描いてくださって。この方の業務の中で、農業以外にも何か違った可能性があるかも、と思い2023年12月にパラアートの事業を始めました。 そこからたくさんの方に支えていただいて広がっていき、サンマルクホールディングスが運営するPetrichor Bakery and Cafeの紙袋やBAKERY RESTAURANT Cのコースターで使用していただいたり、J-WAVEの番組ステッカーに採用いただいたりしています。
また、ファームには子育て世代の女性たちも勤務しています。お母さんって教育者じゃないですか。子どもが何かできなくても切り捨てるのではなくて、どうしたらできるか、何ができるかを見つけて、それを育ててあげるのが得意な人が多いと感じます。 皆さんそれをこのファームでも自然と行ってくださっていて、この方は何が得意で何ができないかをみんなで共有しながら、できないことがどうしたらできるようになるかをいつも考えてくれているんです。例えば、ダウン症で字が書けない方に文字を教えてくれて、半年ほどしたらプランターに植物の名前を書けるようになったこともあるんですよ。 一般的な会社では「できないならいいよ」と言われてしまうようなことでも、一緒にやろうと言って、能力を引き出せるのは、お母さんだからこそだと思います。これは、私には絶対にできなかったことですね。