転売ヤーの“投機商材”と化したソニーPS5 「1台転売するだけで2万円近い利益」
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の家庭用ゲーム機「PlayStation 5」(PS5)の販売台数が伸び悩んでいる。PS5は2020年11月に発売し、21年3月末までの20年度で約780万台が世界で出荷された。 【写真6枚】プレステ5を手に入れる方法 ソニーグループは20年度の連結決算の発表会で、21年度のPS5出荷台数として、全世界で1480万台以上を目標としていた。だが、結果的に予測値を330万台下回る1150万台の出荷にとどまった。 出荷が思うように進んでいない理由は、世界的な半導体不足の影響を受け、PS5の需要に見合う供給ができていないことだ。この世界的な半導体不足は米中の貿易摩擦や新型コロナウイルスの世界的流行による需要の増加などに端を発している。 さらに22年に入ってからはウクライナ戦争の影響もあって、さらに需要が増加した。パソコンに匹敵するハイスペック機をうたうPS5にとっては、他のゲーム機に比べ多くの半導体部品を必要としており、作りたくても満足に生産できない状況がずっと続いているのだ。
大手家電量販店も対策
特に、日本国内での供給は発売当初から厳しい状況が続いていて、そのため“転売ヤー”と呼ばれる個人の転売業者と、量販店との攻防も繰り広げられている。 例えば、大手家電量販店のヨドバシカメラでは、PS5の販売日時を不定期にした“ゲリラ販売”にし、かつヨドバシカメラ発行のクレジットカードを持っている会員にのみ1人1台買えるようにするなどの対策をしている。 他にも転売対策として、購入時に箱に油性マジックで名前を書かせたり、「開封済」という文字が書かれたシールを貼った上で購入客に箱を開封させたりといった対応をしている販売店もある。
転売ヤー「1台転売するだけで2万円近い利益」
PS5の発売から1年半以上が経過しようとしているが、転売商材としての価値は依然として高いという。“転売ヤー”歴10年以上の男性(32)はこう説明する。 「標準モデルの定価が5万4978円のところ、21年末ごろまでは10万円以上で買い取ってくれる中華系の業者も少なくありませんでした。今年の旧正月前以降は落ち着きつつはありますが、それでも約8万円の買い取り額にはなり、1台転売するだけで2万円近い利益になります」 だが、こうした状況も落ち着く可能性がある。PS5を開発・販売するSIEのジム・ライアン社長は5月26日、PS5の生産を大幅に拡大する方針を明らかにした。ロイター通信の報道によるとライアン社長はソニーグループの事業説明会で、「部品不足は改善しつつある」とした上で、「今年は(PS5の)生産を大きく増やす」と話している。 ソニーはPS5の販売目標として、22年度は1800万台の出荷を見込んでいる。これは、21年度の目標値である1480万台を上回る数字だ。ただ、これは全世界に向けた出荷台数であり、このうちのどれほどが国内に供給されるかは定かではない。「全世界への出荷台数に対して国内向けが少なすぎる」という指摘は発売当初からあり、ここがクリアされない限りは、日本国内の状況の改善は程遠いだろう。 また、転売されたPS5のうち、少なからぬ数が日本国外に流出しているとみられている。そのため、販売側にとってはどれくらいの実需があるかも把握しづらい状況になっている。決算発表会でも触れられていたが、PS5はハードの売れ筋に対して、ソフトの売り上げが奮っていない状況にもある。