福田達夫/「安倍さんは尊敬しています」〈福田家三代目がホンネで語った〉――文藝春秋特選記事【全文公開】
「文藝春秋」2月号の特選記事を公開します。/福田達夫(自民党総務会長) ◆ ◆ ◆ ――今回のアンケートの「5年後の総理にふさわしい政治家は?」という質問では、福田さんが圧倒的な1位でしたが、その結果を聞いてどのようなご感想ですか。 福田 何という無謀な企画をやるんですか(笑)。いきなり「5年後の総理に」と言われても、まったく実感が湧いてこないです。もちろん票を入れていただいたのは嬉しいですが、「ええ?」という驚きと、もう一つは「困ったなあ」という戸惑いが正直な感想ですね。 昔からよく「総理になりたいか」と聞かれることはありました。ただ、私自身は「ポストに就きたい」という欲はないんですよ。むしろ今、自分がやるべき仕事に見合った力、権限を欲しいと思うタイプで、何か具体的なポストを求めることはない。現在、就いている総務会長の職も、まさか自分に声がかかるとは思ってもいませんでした。 ――そもそも政治家になるつもりもなかったそうですね。 福田 ええ。私は、もともと商社に勤める会社員で、政治家になる気はカケラもなかった。父(康夫氏)にも「政治というのは継ぐ仕事じゃないの。だから継ぐことを考える必要はない」と言われていました。ただ、父が官房長官を務めていた2004年に当時の秘書官が倒れてしまい、それで急遽、手伝いのような形で事務所に入ったんです。そうこうするうちに父が首相になり、私も首相秘書官として支えることになってしまった。それが今はこうして政治家になっているわけですから「人生は分からない」が私の座右の銘なんです(笑)。 進次郎さんに期待をかけすぎ ――少し前までは、将来の総理候補として、真っ先に小泉進次郎さんの名前が挙がり、その女房役、官房長官の候補として福田さんの名前が出ることが多かった。しかし今回は立場が逆転した印象です。アンケートの回答でも「進次郎氏の脇役ではない」という声もありました。 福田 こういうことを聞かれるから嫌なんですよね(苦笑)。同じ政治家だから、小泉さんと並べられることはあると思います。彼とは農林部会でも部会長と私が代理の立場で農政改革に取り組んだ仲です。ただ、政治家の人気なんかすぐに上がりも、下がりもする。そこを分かってほしい。昔の民主党の支持率は6~8パーセントに過ぎなかったのが、自民党から政権交代する直前の2009年には40パーセント近くまで跳ね上がった。世の中そんなものです。 だいたい、小泉さんについては、みんなが変な期待をかけすぎですよ! (笑) たしか、4年前の若手議員による国会改革についての会見の場でも、本人がいる前で同じことを言いました。当時は彼もまだ37歳だったのに、記者から厳しい質問を浴びていた。でも考えてみてください。皆さんがその年齢の時に「日本を背負え」なんて言われましたか。言われていないでしょう。 近頃、彼は色々と揶揄されていますが、人の心をつかむ能力は高いですし、一緒に海外に行った時、外国人と堂々と英語で渡り合っていました。付け焼刃じゃない。彼の能力は絶対に日本のために活かすべきだし、もっと長い目で見るべきです。 ――今回のアンケートでは、福田さんの「中小企業政策」や「地方創生政策」などを評価する声が多かった。もし総理になったら、そういう政策を推進したいですか? 福田 「もし」って……、仮定の質問にはお答えしません(笑)。そもそも総理というのは「政策力」よりも「政治力」が求められる存在だと思っています。ただ、総理になって中小企業政策を本当にやるかどうかは別としても、実は岸田総理が掲げる「新しい資本主義」の中には、「働く人への分配機能の強化」という項目がありますが、これは私にとってまさに“ど真ん中”の政策理念です。 私が中小企業政策に取り組んできた理由は二つあって、この国の家庭のおよそ7割が中小企業と小規模事業者から生計を得ていて、地域社会の柱になっている。この方々にもっと上手くお金が回る仕組みを作って「地域社会の柱を強くしたい」という想いがあります。 もう一つは、働いている人が正当に評価される世の中にしたいということです。例えば、下請法という法律があって、親会社が下請け業者に支払うべき代金を不当に減額したり、支払いの遅延を禁止する法律です。私自身、数年前の法改正に関わりましたが、これは何も「中小企業が親会社にイジメられるのを防ぐ」という単純な構図ではない。むしろ働く人が技術を磨いて、同じ仕事を短時間でこなすようになっても、評価されずに賃金が不当に安く据え置かれる状況に問題があるわけです。 きちんと働いている人が「頑張っても仕方がない」「この国はもう駄目だ」と希望が持てない社会は絶対におかしい。「新しい資本主義」では「成長と分配の好循環」を目指していますが、まさに中小企業の働き手が評価されて意欲を持って稼ぎ、好循環が生まれる社会づくりをすることがその核になると思っています。
本文:7,307文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
福田 達夫/文藝春秋 2022年2月号