「敵国の潜水艦を撃沈せよ!」自衛隊護衛艦「ありあけ」がインドの駆逐艦「デリー」と"共闘"
日米印豪による共同訓練
軽快に波を切りながらインド洋を20ノットで航行する海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」。そしてその右横約300mを、重武装が特徴のインド海軍の駆逐艦「デリー」が並走する。 【貴重写真】すごい迫力…!日米印豪による共同訓練「マラバール2024」密着写真…! インド国産の全長160m近い大型艦で、巡航ミサイル「ブラモス」を新たに配備したデリーは、ありあけより一回り大きく見える。この2隻の他に米印豪艦艇を加えた4ヵ国8隻の艦艇が、敵艦を駆逐すべくインド洋で”共闘”した――。 これは、10月8日から18日までの間、インド東海岸のヴィシャカパトナム基地及びその沖で行われた日米印豪共同訓練「マラバール2024」の一コマである。 日米印豪の4ヵ国は、安全保障や経済活動において協力していく「クアッド」のメンバー。目指しているのは、「自由で開かれたインド太平洋」の実現だ。 今回、特別にありあけへの乗艦を許された筆者は、対水上戦、対潜戦などすべての訓練を間近で取材することに成功した。 ◆人員交流で縮まった”距離感” 日米印豪が最も力を入れていたのが15日に行われた、″敵潜水艦を捜索し撃沈する″実戦的な訓練だった。2隻のインド海軍潜水艦が敵役を務めた。 ありあけは曳航式(えいこうしき)アレイソナーを使用。先端にハイドロフォンが付いた黒いケーブルを艦尾から流し、潜水艦の音を探す、全世界で主流となっているソナーだ。インド海軍やオーストラリア海軍は哨戒ヘリを使い、潜水艦の捜索を行った。ゼロから潜水艦を探し出し対処する訓練は、実に一昼夜をかけて行われた。 マラバールでは連携を深めるための試みとして、各国の人員交流も行われた。訓練の全期間中、ありあけには2名のインド海軍士官が連絡要員として乗り込んだ。 16日の早朝、ありあけの後部甲板に紺色のツナギに拳銃を装備した自衛隊員たちが整列した。不審船へと乗り込み、制圧する立入検査隊である。「海軍特殊部隊で指揮官を務めた経験がある」と筆者に豪語したインド海軍士官は、自衛隊の訓練をひとしきり見学した後、インド式の制圧方法を披露。「海自の訓練方法は効率的ではあるが、実戦的ではない」と助言し、場の雰囲気を引き締めた。 訓練の合間の自由時間にはインド海軍士官が自衛隊員と連れ立って、ありあけのロゴがプリントされたTシャツを買い求めるシーンもあった。「家族へのお土産にする」と士官たちは白い歯を見せた。 二人は自衛官たちと寝食を共にした。名物「海自カレー」がふるまわれた際にはインドではカレーを米で食べないということを聞いた海自側が、彼らのためにナンを事前に用意するおもてなし。海自カレーをナンに付けて口に運ぶと、士官たちはOKマークで返礼した。しかしながら辛さは物足りなかったのか。テーブルにあったスパイスを振りかけ、「この辛さは日本人には無理でしょうね」と笑顔でつぶやくのだった。 日本とインド、両国は遠く離れてはいるが、訓練参加者たちの距離感は確実に縮まった。「クアッド」が「インド太平洋版NATO」へと進化する可能性を感じさせる訓練であった。 『FRIDAY』2024年12月6日号より 取材・文:菊池雅之(軍事フォトジャーナリスト)
FRIDAYデジタル