米司法省がグーグルの「AI企業への投資」を禁止しようとする理由
グーグルはどう反論するか?
一方、司法省の提案は、グーグルの検索分野のAI投資に特に焦点を当てているが、同社はより広範なユースケースに注力する他のAI企業にも投資している。グーグルは、動画生成AIを開発するRunway(ランウェイ)や、OpenAIのサム・アルトマンが設立したTools For Humanity(トゥールズ・フォー・ヒューマニティ)にも出資している。同社は、ワールドコインと呼ばれる暗号資産を発行し、AIを用いた認証ツールを開発している。 また、司法省の提案がグーグルの親会社であるアルファベットが所有する、2つのベンチャーキャピタル、GVとCapitalGにも適用されるかどうかは定かではない。 ■グーグルはどう反論するか? 司法省が昨年から開始したグーグルを相手取る独占禁止訴訟は、そもそもがグーグルの検索エンジンに焦点を当てたもので、AIが主要なテーマではなかったため、この提案は突飛に感じられるという意見もある。 「司法省の提案は、この裁判の原点から大きく外れたように見えるので、真剣に受け取ることができない」と、コーネル大学法学部の反トラスト法に詳しいジョージ・ヘイ教授は述べている。 一方、連邦通信委員会(FTC)の元委員長で現在はジョージ・ワシントン大学の法学教授であるウィリアム・コボチックは、グーグルがAIの取り組みを制限された場合に、「中国に技術的な優位性を与えることになる」と主張する可能性が高いと述べている。 グーグルは長年、AI分野のリーダーとして君臨しており、2011年にGoogle Brain(グーグルブレイン)を設立し、2014年にDeepMind(ディープマインド)を買収した。その3年後にグーグルブレインの研究者らは後のジェミニやChatGPTの基盤となるAIアーキテクチャの「トランスフォーマー」を発明した。 しかし、グーグルはその初期のリードにもかかわらず、2年前にOpenAIがリリースしたChatGPTに先を越され、AI競争で遅れをとったと批判された。 AI分野でグーグルと競合するマイクロソフトは、2019年から2023年にかけて累計130億ドル(約2兆円)をOpenAIに出資したとされるが、司法省の提案は、グーグルが同様の出資を行なうことを禁じるものだ。 しかし、グーグルのAI分野での広範な取り組みを考慮すると、これらの提案が同社に大きな打撃を与えることはないだろうと、調査会社Technalysisの創業者であるボブ・オドネルは述べている。「マイクロソフトは社内にAIの才能を持たなかったため、OpenAIとの提携を必要としたが、グーグルは他の誰よりも長くAIを研究してきた。彼らは、たとえ前進を妨げられても、前に進んでいくだろう」と彼は語った。
Richard Nieva