菊池桃子「人は少し自信がないくらいの方が実はぐんと伸びたりする」40歳からの“大人の学び直し”で得たものとは
障がい者だけではない。誰もがキャリアの過程でぶつかる壁とは
――大学院で学ばれた「キャリア形成論」とはどういった学問なのでしょうか。 菊池桃子: 「キャリア」にはラテン語の「轍(わだち)」という意味があります。人生を考えるとき、未来にどんな轍を作っていくかをイメージして、「そのために今やることはなんだろう」と考えると具体的な目標が見えてくるのです。 学生であれば就きたい職業によって学ぶべきことは異なりますし、取るべき資格も変わってくるでしょう。大人でも、10年後に健康でありたいなら今日取り組むべき課題が見えてきます。キャリア形成論はすごく汎用性があり、あらゆる世代に向けていろいろな提案が可能な学問なんです。 ――キャリア形成論を学んで得た気づきなどはありましたか? 菊池桃子: 人生の中で壁が生まれるのは、障がいがある人だけじゃないことに気がつきました。性別や生まれた家庭の資産によって学歴に格差が生まれたり、生まれた年代によって就職が難しくなったりすることもあります。 また、1980年代には男女雇用機会均等法が施行され、2000年代に入ってからは女性活躍推進法が施行されるなど、女性は応援されることが良いと周知される一方で、男性への議論がいまいち進んでいない。「男なんだから泣くな」「男なんだから一家の大黒柱になるんだぞ」と言われてきた男性たちが感じるプレッシャーの大きさも考えるべきなのではないかと思います。細かい研究を目にしていくと、悩んでいない人はいないんじゃないかというくらい、いろんな方々への思いやりが見えてきますね。 ――芸能界における労働環境の変化についてはどのように感じていますか? 菊池桃子: 業界全体として労働時間の捉え方が厳しく管理されるようになったと思います。例えばドラマ撮影はかなりハードスケジュールですけれども、必ず休み時間を取る、寝られる時間を作るなど、一斉に切り上げるという雰囲気が出てきた。今は、みんなの意識が高く、非常に良い状態だと思っているので、これが下に向いてしまうことが心配です。 最近はコロナの話題や戦争のニュースで働き方改革も忘れられがちなので、より良い働き方などを純粋に伝えるニュースがあっても良いかもしれませんね。