ユーチューバー・116 Winsが分析するシアトル・マリナーズの課題と輝かしい未来
◇補強選手たちの思わぬ不振と後半戦に向けた期待 116勝シーズンのときにはファンでなかった116 Winsさんは、長年、マリナーズを応援しながらも、一度もチームのポストシーズンでのプレーを見たことがなかった。しかし、全マリナーズファンが歓喜したであろう瞬間が、2022年に訪れた。9月30日のオークランド・アスレチックス戦、マリナーズはカル・ローリーのサヨナラ弾という劇的な形で、21年ぶりのポストシーズン進出を決めたのだ。 「本気泣きしましたね。決め方も劇的だったし、約20年の積み重ねもあったし……」 マリナーズはその後、ワイルドカードシリーズでも劇的な試合展開で勝ち進んだが、ア・リーグ地区シリーズでは敗退。念願のワールドシリーズへの進出はならず、翌23年も僅か1ゲーム差でポストシーズン進出を逃すなど、“惜しい”シーズンが続いた。しかし、今季は再び大きなチャンスを手にしている。 本記事執筆時点(6月24日)で、マリナーズは2位に6ゲーム差をつけての地区首位。大きな連敗を経験することもなく、順調に勝ち星を積み重ねることに成功しており、同地区のライバル球団の状況がそれほど良くないのもあって、ポストシーズンだけではなく、その上も狙えそうな勢いだ。 チームの勝ち星は順調でも、何もかもがうまくいっているわけではない。今季のマリナーズには課題も多くある。リーグ有数の先発ローテーションを軸に高い投手力を誇るものの、打線の迫力不足は顕著だ。 「補強の意図は理解できるし、思考のプロセスは間違っていないと思うんですけど、なかなか結果がついてこないというか。やっぱり、(打者不利なT-モバイルパークを本拠地にするため)思った通りにはならないっていうところがシアトル。これが、シアトルに打者を呼ぶ難しさでもあると思うんです」 新戦力としてミッチ・ガーバー、ミッチ・ハニガー、ホルヘ・ポランコらを獲得したが、いずれも思うような結果が出ていない。 特に4人の選手を放出して獲得した目玉、二塁手のポランコは打率2割に満たず、期待された長打も僅か5本塁打と寂しい数字。しかも、5月にハムストリングスの故障でIL入りし、長期離脱をしている。しかし、116 Winsさんが今後のキーマンに挙げるのが、そのポランコだ。 「マイナーでリハビリしていて、3Aでホームランも打ってるんですけど、ポランコが打ち始めてくれると、打線の厚みも増すのかなと。(不在時は)ライアン・ブリスとかディラン・ムーアとか、いろんな選手で回してますけど、ポランコみたいに20~30本も期待できるほどの選手ではない。やっぱり、ポランコがもう少しパワー面でチームを支えてくれるといいなと」 ポランコはパワーだけではなく、ここぞの場面で発揮できる、チームが欲しい一本を打てることが魅力の選手だと116 Winsさんは語る。後半戦はツインズ時代の勝負強さを再現することに期待だ。 ◇「メジャーリーグは知れば知るほど面白い」 また、116 Winsさんはチーム最高のスター選手、フリオ・ロドリゲスもキーマンとして挙げる。 「フリオは去年も前半戦はさっぱりだったので、こういう選手なんだろうなっていうふうには思ってるんですね。後半戦に強いタイプなんだろうなっていうところはあるので、後半戦もさすがにこの調子だったらちょっと心配なんですけど、まあどこかで打ち始めるだろうという楽観的な気持ちはあります。 ただ、今年と去年の前半戦のフリオもそうだったんですけど、(ハードヒットは出ているのに)打球が上がらないのがすごく困るというか。今年のフリオは、特に長打が出てないので、そこだけはどうにかならないのかなと思います」 マリナーズはオフに三振を減らすという目標を立てながらも、今季の三振率はワーストで、思い描いていたような打線にはなっていない。ただ、それについては116 Winsさんも「連れてきたのが三振の少なくないタイプだったので」と、ファンとしては想定内の部分もあると語る一方で、「三振の仕方には着目していただきたい」という。 「ボール球を振って三振が増える。去年のマリナーズがまさにそうだったんですけど、今年はボール球を振ることは減っている。マリナーズの組織としての哲学に“ゾーン管理”というのがあるんですけど、そこは徹底されているイメージがあります」 三振が増えているのはボール球を振るからではなく、ゾーン内でのミスショットが多いから。アプローチは悪くないだけに、ミスショットを減らすことができれば、後半戦は一気に得点力を向上させる可能性もあるということだ。 今季のマリナーズには十分な手ごたえを感じている様子の116 Winsさん。YouTubeチャンネルでは主にMLB全体を取り上げることが多いが、やはり長年のマリナーズファンというだけあって、チームに対して並々ならぬ思いを持っていた。 YouTubeは「あくまで趣味」と語るが、学生時代から続けてきた情報発信は、ついに116 Winsさんが監修した書籍『メジャーリーグは知れば知るほど面白い』(マイナビ出版)として、発売されるまでに至った。 「自分が面白いと思っているものを視聴者の方にも同じように面白いと思ってくれたらいい」と活動を続けている116 Winsさんは、今後も日本のMLB人気向上の一端を担うに違いない。 (取材:Felix)
NewsCrunch編集部