「国旗の尊厳守れ」中国で国旗法改正 市民からは心配の声も
【東方新報】「落書きしない」「踏みつけない」「逆さにしない」 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は17日、国旗法と国章(国の紋章)法の改正案を可決し、「国旗と国章の尊厳を損なう行為」を細かく禁じた。愛国心の高揚を図る狙いだが、「これからは国旗の扱いに慎重にならざるをえない」と心配する声も出ている。 改正国旗法第1条では「国旗の尊厳を守り、愛国主義精神を発揚し、社会主義の価値観を育成し実践する」とうたっている。そして具体的には「破れたり汚れたりした国旗を掲揚する」「国旗を逆さまに掲げる」「国旗を燃やす」「踏み付ける」「落書きをする」「みだりに捨てる」など、禁止事項を事細かく規定を設けている。大規模イベントで国旗を使う場合、主催団体がイベント終了後に適切な形で国旗を回収することも求めている。 赤字に5つの黄色い星を配した中国の国旗は「五星紅旗」と呼ばれる。大きな星は共産党、他の4つの小星は労働者、農民、知識人、愛国的資本家を表している。天安門広場で毎日夜明けとともに行われる国旗掲揚式は、よりすぐりの衛兵が勢いよく腕を振って国旗をバッと掲げるシーンが観光客に人気だ。屋外の政府行事でもたいてい、衛兵が国旗を高く掲げるシーンがクライマックスとされ、中国で国旗の存在感、神聖感は極めて高い。国章は日本ではあまりなじみがないが、5つ星に天安門(Tiananmen)、稲穂などがデザインされた国家のシンボルで、政府機関の建物入り口などに掲げられている。 改正法は来年1月1日から施行され、特別行政区の香港でも関連条例を改正して適用される。香港で昨年から続く抗議活動では、国旗を逆さに掲げたり、燃やしたりする場面があり、こうした行為が取り締まりの対象となる。中央政府駐香港機関は勤務日に国旗や国章を掲げることも規定している。 一方、インターネット上では「今後はむやみに国旗を捨てられない」という書き込みもある。 中国では天安門広場など全国から観光客が集まる場所で、安いプラスチック製の小さな国旗が売っており、国旗を持って記念写真を撮るのが定番。帰りにはたいてい、国旗をどこかに捨てていく。また、国家級のイベントや国際スポーツ大会では主催側が来場者に小旗を配ることが通常で、イベントが終われば付近の路上に国旗が散らばっていることもよく見る光景だ。こうした行為まで「法律違反」となることを心配する向きがある。 「国旗の尊厳を傷つける意図がなければ問題ない。観光客が国旗の小旗をポイ捨てするぐらいで捕まることはない」というのが冷静な意見だが、「国旗の小旗を捨てる瞬間や、路上に捨てられた国旗をふんづけてしまったところを誰かがスマホで撮影し、『愛国者として許せない』とネットに投稿されたら怖い」という書き込みもある。中国では古くから「上(統治者)に政策あれば、下(庶民)に対策あり」という言葉があるが、市民は当面、新たな「対策」を考えることになりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。