石破首相に米メディアが提言「日本経済復活への課題は熊本の例にあり」
日本は復活したのか
世界の投資家に言わせれば、日本は復活を果たした。株式市場は過去最高に手が届く勢いで、デフレも克服したかに思える。 資金は取引や投資へと押し寄せ、日本銀行はもはや超緩和的な景気刺激策という実験から手を引いた。日本経済は潜在成長率1%を上回る勢いで成長していくというのが日銀の見方だ。 日本のリーダーも世界の舞台でいっそうの自信を見せるようになった。米国の同盟国である日本はかねてからハードパワーの誇示を避けてきたが、中国や北朝鮮を巡る懸念を受け、防衛費を急増させているほか、ウクライナ支援などの問題についても影響力のある発言が目立ちつつある。 日本は第2次大戦で敗北して荒廃し、占領下に置かれたが、その後は1980年代まで急成長を続け、米国に次ぐ世界第2位の経済大国へと発展を遂げた。日本製の家電が世界の羨望の的だった1992年、日本の1人当たりの国内総生産(GDP)は米国を上回って3万2000ドル(当時のレートで約400万円)に達した。 ところが、それからおよそ30年が過ぎたいまでも、GDPは3万3000ドル止まりだ。国際通貨基金(IMF)のデータによれば、それと同じ期間で、米国のGDPは8万5000ドル(約1275万円)と3倍以上に成長している。 日本の人口は10年以上前から減少へと転じ、現在は年間およそ60万人というペースで減り続けている。投資不足と人口急減が相まって、日本各地の市町村は深刻な打撃を受けている。最近は外国からの移民受け入れもわずかながら始まっているが、本格的な移民対策を口にするのはいまも政治的タブーだ。 人口動態は、日本が抱える問題の一部にすぎない。2022年の日本の労働生産性は、先進国で構成される経済協力開発機構(OECD)加盟国38ヵ国中、30位だった。自動車産業を除けば、日本の製造業は経済停滞によって大きな痛手を受けている。 半導体生産では、海外の競合他社が世界シェアを拡大し、日本は後れをとった。その間もデフレが続いたことで、当局は経済の再活性化に向け、物価上昇率2%を維持することを主な目標に掲げた。 こうした長きに及ぶ経済停滞があったからこそ、いまの日本は大いに沸いている。日本企業が数十年ぶりとなる最大の賃上げを行ったことで、インフレが再燃。 日銀は2024年3月に2007年以来となる利上げに踏み切った。日本政府も、TSMCやサムスン電子、マイクロンテクノロジーといった企業の日本での事業強化を後押しする戦略として、半導体産業の復興に4兆円を確保した。
熊本県の地理的な重要性
半導体製造装置の技術サービス会社ジャパンマテリアルでの事務職に就くため、熊本県内の他地域から越してきたワタナベ・チズルは「ここはいま、仕事を探すにはもってこいの場所です」と述べた。「これからきっと、すばらしいことが起きるはずです」 熊本は戦略的にも重要だ。TSMC熊本工場の完成で、日本と台湾の絆は深まった。民主主義国家である台湾は、中国が占領へと動けば、この地域の火種になるかもしれない。
Alastair Gale and Yoshiaki Nohara