溶融亜鉛めっき加工業界、未曽有のコスト高で体力勝負の域。市場環境の好転に時間・異次元の値上げで対応
日本溶融亜鉛鍍金協会の菊川美仁理事長(ガルバ興業社長)は鉄鋼新聞社などのインタビューに応じ主原料の亜鉛が記録的な高騰を続ける現状に「未曽有のコストアップで体力勝負の域に達しており、異次元の値上げに対応しなければ死活問題になりかねない」との認識を示した。 溶融亜鉛めっきの需要をめぐっては「地域や分野によって濃淡がある」と指摘。昨夏にかけ約2年に及ぶ生産量の漸減傾向に歯止めがかかるものの、その後は前年同月比で1桁前半の増加率にとどまり「21年度は前年並みかわずかに届かない可能性もある」。22年度も上期を中心に建築向けで端境が続くとみられるなど、市場環境の好転には一定の時間を要するとの見方を示した。 新型コロナ下で会員各社は経営改善を進める一方、世界的な景気回復や電力需給のひっ迫などに伴って亜鉛は高値圏を維持。急速な円安や融解に必要な燃料費の上昇も重なり、各社の採算悪化に拍車がかかる。業界では廃業や事業縮小の動きが出ており、菊川理事長は「さらにコスト負担が膨らめば、より深刻化する恐れがある」と警鐘を鳴らした。 一連の状況にウクライナ情勢が加わり、菊川理事長は「従来の上昇局面と明らかに異なり、長期戦を覚悟しなければならないかもしれない」と言及。「足元で取り組む値上げが完全に浸透しても、安定供給に向けて一段の価格改善が不可欠」と強調した。 かつてない逆風が吹き付ける溶融亜鉛めっき加工業界だが、光明も差す。脱炭素化やSDGsの潮流が広がる中、19年の土木学会に続き、今春には建築学会が「溶融亜鉛めっき鉄筋を用いた鉄筋コンクリート造建築物の設計・施工指針・同解説」を刊行。菊川理事長は「建築と土木双方でめっき鉄筋が採用される土壌が出来上がった」と述べると共に最近の研究で溶融亜鉛めっきの抗ウイルス作用が発見されるなど「時代のニーズにマッチした溶融亜鉛めっきの強みを普及する足がかりになる」と期待を寄せた。