年齢を重ねることを楽しむ! 『カクレンジャー 第三部』小川輝晃&広瀬仁美対談
カクレンジャーの旅はまだまだ続く
◆カクレンジャーの旅はまだまだ続く◆ ――今作は紆余曲折を経て制作に至ったとのことですが、企画段階から特にこだわっていたところはどこでしょうか? 広瀬 歳を取ることは悪いことじゃない、それは伝えたいなと思っていましたね。 小川 10周年、20周年だと現役からそんなに離れていなくて、「まだ俺らはやれるぜ!」みたいな感じになるじゃないですか。僕らはせっかく30年経って作るから、若作りして現役時代と同じようにやれるぜ、っていうのはちょっと嫌だなと思っていて。人間ってみんな歳を取るものだし、そのことを恥ずかしいとか、どんどん衰えていると捉えがちですよね。そうじゃなくて、いい年齢の重ね方をして「これでもいいんだよ」と言えるものにしたい、と考えていました。 広瀬 どちらかというと前向きだよね、老いに対して(笑)。 小川 「楽しく歳を取ろうぜ!」って(笑)。 ――吾郎と彼を引き取って父親になったセイカイの親子の物語は、まさに30年の歳月を経たからこそ描けたものだったと思います。 小川 そうですね。当時子どもだった人たちも僕らと同じように歳を取り、今では親の世代になって悩みを抱えているはず。そこに答えじゃないですが、一つの光を見せたいなと考えていたんです。セイカイがそれをちゃんと担ってくれて、とても良いセリフを届けてくれたことは、同じメンバーとして素晴らしかったなと。実はラスト近くのセイカイと吾郎(サンモトゴロウザエモン)のシーンが、河合の撮影初日の第一声だったんです。彼が一番この業界から離れていたので、僕らもどうなるか心配していたんですが、とにかくすごいのひと言で、鳥肌が立つ感覚がありました。あれで成功したなと確信しましたね。セイカイの物語ですよ、今回は。 ――セイカイは5人の中で一番子どもっぽいというか未熟な印象があって、立派に成長したんだなと感動しました。 広瀬 確かに! 私たち自身の関わり方だとみんな対等で、キャラとしてというより演じる個人として見ているから、その発想はなかったです。そういえばセイカイ、めっちゃ未熟者だったよね。 小川 最後に入ったジライヤはもともとデキる人って感じで、サスケとサイゾウは逃げ惑ってはいるけど戦える状態だったし。セイカイは最初、一番ダメダメだったかも。 広瀬 食べることと女の子が大好き、っていうのもすごい設定(笑)。それがまあ立派になって……。 ――ラストはさらなる展開を予感させる結末で、ファンとしてはどうしても今後に期待したいところですが……。 小川 僕らは最初、25代目に譲りたいと話していたんです。吾郎に「カクレンジャー25代目リーダーよ」と言っているけど、まだ本当には譲れていないし、譲らないと終われない。だからほかのメンバーは誰がいいかなって、勝手にチョイスを夢想しています。この歳になっても夢を見るのが好きなので(笑)。 広瀬 25代目になったら、小さい赤いネコマルの上に忍者装束で立ってもらわなきゃ。そこまで継がせないと(笑)。 小川 ネコマルあってのカクレンジャーだから。 広瀬 新しいネコマルもかわいかった。 ――まだまだお話をお聞きしたいところですが、改めて『カクレンジャー』がお二人にとってどんな作品なのかを伺えればと思います。 広瀬 30年前、最終回で「愛と勇気と希望を持って」というセリフがあって、それで私の中では終われていたんです。でも皆さんの反響を見て、本当に愛と勇気と希望でここまできていると感じて、私にとって『カクレンジャー』は愛と勇気と希望だったんだなと思いました。みんなの愛や動き出す勇気で作品ができて、希望を乗せて届けられたんだなって。 小川 すごい、初めて感心しちゃった(笑)。当時『カクレンジャー』が終わるとき、プロデューサーから「どんな終わり方をしたいですか?」って聞かれて、僕はそのときに死にたくない、僕たちは絶対生きていたいと話したんです。誰かが死ぬというのは一見感動的だけど悲しいだけで、感動の種類が違うと思って。どんな物語も、それこそ昔話なら「めでたしめでたし」で終わりますが、その後も生活が続いていくんですよね。そのことを感じさせる物語じゃないと意味がないと思ったし、だからこそ30年前はネコマルに乗って旅を続けるという結末だった。今回は続いている旅を見せることができて、今後もまだ続いていく物語にしたいという想いを坂本監督が汲んでくださり、ああいう締めにしてくれた。講釈師役の(神田)伯山さんも、「それではこの続きは……」と言ってくださって。 広瀬 あのセリフはアドリブで、私も現場で見ていたけどOKってなった瞬間、坂本監督が「また続きできちゃうね」って言ってた(笑)。 小川 それ聞いて流石だなと思ったし、よくぞあの締めにしてくれたなって。素晴らしい。皆さんの生活も僕たちの生活も先があるし、楽しいことだけじゃなくて苦しいこともあるけどそれを乗り越えて、またみんなで笑って会いましょう! (C)東映特撮ファンクラブ (C)東映
佐久間 翔大