”心の復興”を描く 映画「漂流ポスト」
Japan In-depth編集部 (高橋十詠)
【まとめ】 ・”心の復興”を描く映画『漂流ポスト』、3月5日からアップリンク渋谷他にて公開開始。 ・現在、ポストは被災者に限らず、想いの受け止め口になっている。 ・震災から10年。今一度、記憶を振り返ろう。
あの東日本大震災から、早くも10年が経とうとしている。私たちの身の回りは今やコロナという単語で溢れている。3.11と聞く機会は減り、一見日常を取り戻したかのようだ。しかし、震災の傷跡は、未だ深く被災者の心に残っている。 岩手県陸前高田市の山奥に、今でも多くの手紙が届き続ける赤いポストがある。 手紙はどれも、亡くなった人たちへ綴られた想いだ。そのポストを通し、”心の復興”を描く映画『漂流ポスト』が、諸外国の映画祭で評判を受け、日本でも全国公開決定に至った。現在、大阪府、いわき市にて公開が始まっており、3月5日(金)より「アップリンク渋谷」他、全国にて順次公開が進む。 映画について、監督の清水健斗氏、主演を務めた雪中梨世氏、そして漂流ポストの管理人である赤川勇治氏に話を聞いた。
■映画化の経緯 ボランティアを通し、被災地に寄り添ってきた清水監督は、震災から3年経過した時点で風化の危機感を抱き始めたという。 「震災当時の”電気や水を大切にしよう”という意識が、ほとんど無くなってきている。ボランティアをしていた自分ですら忘れてきているのだから、関わりを持たなかった人はなおさらだろう」 そう感じた清水氏は、震災の記憶や教訓を映像として残し、今後も伝えていきたいという思いが込み上げてきたそうだ。偶然目にした漂流ポストのドキュメンタリー映像から漂流ポストに興味を持ち、管理人である赤川氏に連絡を取った。 ■「漂流ポスト」誕生物語 赤川氏は、「被災者の方の要望に応えた形」でポスト設置に至ったと話した。 震災当時カフェを経営していた赤川氏は、「こんな時に呑気にカフェなんてやっている場合ではない」と、店を閉じようとしていたそうだ。それから暫くは仮設住宅に住んでいた人たちを心配し、お見舞いに訪ねていたという。次第に、赤川氏は被災者の胸の内を聞くようになった。 「お客さんの苦しさがどんどん増してきているんです。『息が詰まりそうだ』と」