Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

【コラム】1か月断酒するだけのつもりが…効果の大きさに意外な結末

配信

The Guardian

【執筆:Gay Alcorn】  さあ、どうしたものか。1か月断酒した。自分にとっては一大事だ。成人してから30日間連続でアルコールを断ったことがないのだから。  やろうと思った理由だって特別でも何でもない。退屈するほどありがちだ。私は中年で、何十年にもわたって控えめに飲んでいるつもりだったが、少しずつ飲酒量が増えていた。1晩にワインをグラス1杯から2杯に、それから3杯……。いや、ごまかすのはやめよう。大抵はボトル1本、それ以上のことだってあった。  ここ数年、アルコールの量を減らすべく夫と数えきれないくらい議論してきたし、大げんかにもなったことも何度かあった。義務的な「休肝日」も試した。だが私は以前の自分なら考えられないことに、ネット上の言葉を借りると、しらふの生活を楽しむ「ソーバー・キュリアス」になったのだ。  朝起きてからぼんやりしたり、少し悲しかったりするのはあまりにも日常的だったので、ほとんど意識すらしていなかった。仕事は楽しかったが野心がなかった。人付き合いを避け、散歩に行ったり映画を見に行ったり、友人とランチに行ったりするのもあまり楽しめなかった。そんな自分に気付くのに数年かかった。アルコールはあまりにも自分の人生を強く支配していて、もはや自分自身にすら、それを隠せなくなっていた。  私はよく「他の人をもっと面白くするために酒を飲む」という米作家アーネスト・ヘミングウェーの格言を引用していた。でもそれは本心ではなかった。自分の人生はもっと面白いはずだと錯覚して、現実逃避するために飲んでいたのだ。それに酒を飲むのが好きだったから。でもそれは自分を正当化しているだけなのかもしれない。私たちが絶対悪と見なす違法薬物同様、アルコールは依存性が高いもので、私は長らくそれに依存していただけかもしれない。  さあ、どうしたことか。1か月間断酒をした結果、困ったことに、ばかばかしいくらい思いがけなく断酒は良かった。とにかく、素晴らしい経験をした。友人と観劇前に一杯と言いつつ飲まなかったり、金曜夜に飲まなかったり。家族とのランチでミネラルウォーターを味わったり、本の発売イベントに行ってぬるい安物の白ワインを飲まずに1時間過ごしたりした。  だが、完全に酒を断ったわけではなかった。一度だけ飲んだ。7月15日月曜日のことだ。健康で明るく、はつらつとした母が突然、とても深刻な病気と診断されたのだ。瞬時に「飲まねば」という思いが頭をよぎり、赤ワインを1本飲んだ。悲しみに打ちのめされ、ネットで母の病気について読み漁り、最悪のシナリオを想定した。  だが、翌日の出来事に、私は驚いた。少し酔いが残る中「飲んでも解決しない。自分のためにも、母のためにもならない。事態が悪化するだけだ」と思ったのだ。こんなことを考えたのは、人生で初めてだった。  1か月断酒するという比較的簡単なものでも、できるか分からないことを成し遂げるのは達成感があった。だが、その影響の大きさは予想外だった。2週間ほどたって、フェイスブックにこう投稿した。「酒を飲まないと、(正直ちょっと驚いたが)自分がこれまでより善良で優しく、エネルギーに満ちて、生産的で幸せな人間だということが分かった。ホントがっかり!」  1か月断酒するだけのつもりだったのが、この生活を手放すのは惜しいと思った。私は友人や家族にとってこれまでより頼れる人間になり、よく話を聞き、すぐに決めつけないようになった。仕事ははかどるようになり、野心も出てきた。食欲が増し、運動もするようになった。夜は赤ん坊のようにぐっすり寝て、起きてからも思考にもやがかかった感じがしなかった。これまでより幸せな人間になった。 「適度の飲酒」に悪影響はなく、むしろ利益があるという最大かつ最も詳細な調査結果に反論するのは難しい。だが、飲めば飲むほどリスクは増すものの、時々であっても悪影響だということが分かった。  それでも正直に言うと、1口目から30分後の感覚はとても恋しい。悩みがふわふわと飛んでいくような至福の感覚だ。この感覚は、どれほど短くても、どれほどの代償を払ってでも味わうに値するのだろうか?  頭の片隅では、いまだに答えは「イエス」だ。もちろん、飲酒量を減らしつつ、絶え間ない思考が薄らいでいくような、抑圧された感情がなくなっていくような、あの多幸感に浸ることはできる。  だが、1か月断酒した結果、どれだけ考えてもしらふでいることの利益がアルコールの利益を上回った。もう1月、断酒を続けようと思う。もう二度と飲まないとは言えない。そう考えると恐ろしくなる。でも、断酒の利益はあまりにも大きく、無視することはできない。  そんな自分に乾杯しよう。 ゲイ・アルコーン氏:ガーディアン・オーストラリア版のコラムニスト 【翻訳編集:AFPBB News】 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

【関連記事】