羽生結弦選手の演技ささえたイタリアの20代3人組「イル・ヴォーロ」とは?
フィギュア・スケートの羽生結弦選手やロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手がエキシビジョンに採用して話題を呼んだイタリアの「イル・ヴォーロ」が、今秋初来日することが19日、わかった。You Tube再生回数9000万回突破という脅威の3人組男性オペラユニット。21~23歳、いずれも生粋のイタリア男子で、深みのある歌声と繊細かつ豊かな表現力の持ち主。ワールドツアーでは20万人を動員する人気だが、日本では馴染みがない。羽生選手の演技で初めて知った人も多いのが現状だ。いったいどんなユニットなのか?
出会いはオーディション番組「3大テノールのようなユニットを作りたい」で結成されたグループ
羽生選手が2016年~17年シーズンエキシビジョンに使用した「ノッテ・ステラータ星降る夜(スワン)」は、スケーティング技術の集大成といえる印象的な演技と、白鳥をモチーフにした衣装、やりきった充実感がにじむ微笑みと相まって話題になった。海外の反応も「実に崇高」「このやり方で滑り、表現できるのはユヅルだけ」などと絶賛の言葉が並んだが、それを支えたイル・ヴォーロの音楽にも一層の注目が集まっている。 懐深く甘く芳醇な声と、あどけなさの残る容姿の大きなギャップは魅力の源泉。ジャンルカ・ジノーブレ、イニャツィオ・ボスケット、ピエロ・バローネの3人は、幼いころから3大テノールに憧れ、2009年にイタリアのオーディション番組にソロ歌手として出演。当時14~15歳の少年だったが、それぞれの圧倒的な歌唱力に番組側は「3大テノールのようなユニットを作りたい」と決断。同番組でグループを結成し「オー・ソレ・ミオ」を披露すると、 「最初はフェイクだと思った。まさか3人の子どもが45歳のテノール歌手のように歌うとは」と、イタリア音楽界の大御所トニー・レニスを唸らせ、米国のメジャーレーベルと直接契約した初めてのイタリア人グループとなった。 オペラのアリアもポップスのスタンダードも、自在に歌い上げる。ソロパートでは三者三様の個性が輝き、3人の声がひとつになるときの重層的なハーモニーの躍動感ある美しさは、オペラファンからポップスファンまでを虜にしてきた。 昨年は、イタリア・フィレンツェで三大テノールのプラシド・ドミンゴと共演。会場のサンタ・クローチェ広場を3万人の聴衆が埋め尽くしたという「イル・ヴォーロ」。羽生選手のホーム、日本ではどのように受けいれられるだろうか。初来日記念コンサートは11月29日オーチャードホール、12月1日川崎市スポーツ・文化総合センターで行われる。 (文・志和浩司)