《ブラジル》【特別寄稿】TMK鉄道車両部品作りで大躍進=技術者魂発揮する田所社長=日本で起業、従業員100人
創業経営者の田所トミオはサンパウロ州生まれの日系二世。29歳だった1996年に来日した後、2004年に37歳でTMKの前身である田所工業を創業した。 そして24年たったいま、会社はJR東日本の通勤電車や特急電車など鉄道用車両の部品製造に携わっている。製造しているのは全体ボディと床下関係の部品で、新幹線車両の部品供給も行っている、受注型産業の会社である。 田所の持論は「最先端の技術と設備でお客様ニーズに応えること」で万全な信頼を築いている。『品質と技術』で事業を成功させており、部品の品質及び生産性向上のために最先端の新機材導入を欠かしていない。 昨年は駐日ブラジル大使も工場見学したほどの注目会社になっている。海外日系人350万人の中で、この分野の創業社長は田所トミオが初めてであり、技術立国日本の最前線で仕事をしている。 日本行きを目指す日系人にとっては、産業人としての誇りを貫く田所の成功は大きな励みになるだろう。日本定住30周年を飾るにふさわしい率先垂範型の経営者である。
鉄道車両の製品設計や製造、メンテナンスを手掛ける
TMK社とはどのような会社なのか。 その特徴と独自性が一目でわかるのが生産部門だ。鉄道車両の部品や製品の設計、製造、メンテナンスを中心に事業を展開しており、顧客からの要望に応え関東地方や広島、新潟を走る路線鉄道車両数を維持するための部品供給を続けている。 本社は神奈川県藤沢市で、事業所が横浜事業所、広島・三原事業所、新潟事業所と全国に3カ所ある。社員数は100人で外国人従業員比率は30%。 同社の事業部門は次の通り 電車部門は、反転構体部品付け配管組立、台枠組立(アルミ、SUS)。設計製造部門は、鉄道車両の様々な部品製造(約5千種類で月産1万5千枚)で具体的には組立用部品だ。 工場ではアルミニウムや鉄、ステンレス、銅などを、3次元や2次元CAD設計に基づいてコンピュータ制御で曲げ、加工や特定の角度に変形させる加工をする機械や、高精度のレーザー切断機などの最新機器を使用している。 建築部門は、フェンス(SUS)、手すり(SPCC)、庇(ひさし、SUS)。メンテナンス部門は、新しい鉄道車両を目的地まで輸送するため編成ごとに分け、到着後に組立、整備を行うという作業をチームで行う。また車両の改造やメンテナンスのため現場の駅まで社員派遣もしている。
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