買った翌日にライトがポロリ!!! 悪夢のようなランチア・デルタを愛車に変えた夢のガレージ!
まるでオトナの玩具箱!
サーキット走行仕様に仕立てた2台の愛車やバイク、さらに調度品に至るまで、ガレージの中に収まっている多くのものを自作し、楽しんでいる小沼さん。自作のバーカウンターで作ったお酒を楽しみつつ、クルマを眺めるのが至福の時らしい。 【写真13枚】初代ホンダZとランチア・デルタが並ぶ遊び心満載のガレージの写真をチェック ◆“水中メガネ”のホンダZ 「いまでこそガレージのオブジェとしてシャコ(車庫)レーサー化していますが、このホンダZは老後の楽しみとして公道に復帰させる予定です」 発売当時、特徴的なリア・ウインドウの形状から“水中メガネ”というニックネームが付けられた初代ホンダZ。小沼さんはこのクルマのことを親しみを込めて“盆栽”と表現する。そんなオレンジ色のレーシーな軽自動車は、1992年に個人売買でゲットした。「よく通る道にある中古車屋の軒下にずっと置いてあったんです。譲ってくれないかなと思って訊いてみたら、そこの従業員のクルマでした。3万円でOKという話になったので迷わず購入しました。その当時はガンメタでボディは錆だらけでしたね」 購入後、オシャレな足グルマとして2年間ほど通勤に使っていたが、旧車のイベントに参加したときに他のクルマがピッカピカだったのを見て、外装のレストアを決意。ドア・モールをはじめ、当時手に入れられるパーツをできるだけ買い集め、町の鈑金屋に作業を依頼した。「フォトショップでボディ・カラーをアレコレ考え、初代シビックRSのサンセット・オレンジにしました。ホンダZ純正のオレンジよりも明るい色なので、気に入っています」 小沼さんは外装がキレイになったホンダZを駆り、筑波サーキットで開催されていた360ccオンリーの草レースに1999年から参戦するようになる。なお、そのレースで2003年には念願だった表彰台に登壇し、シリーズ・チャンピオンも獲得している。 「レースに参戦しようと決めた直後のことだったのですが、通勤途中にエンジンがブローして、自分の手で初めてエンジンをオーバーホールしました。ところが、クランクシャフトとメタルのクリアランスをしっかり取らなかったんですよ。そうしたら案の定、初戦の決勝レース中にブローしました。走行できた時間は15分ぐらいでしたね。その後、2回目のエンジン・オーバーホールを実施し、それ以降はブローしていません」 エンジンの排気量を400ccまでボア・アップしたホンダZは、筑波サーキットのコース2000を1分22秒で走れるという。ちなみに使うのは4速と5速だけで、第2ヘアピンを立ち上がると1コーナーまでは全開のままだという。 2005年にレース活動を休止し、ホンダZを長きにわたって寝かせていたが、再び車検を取ることを決意する。2017年にラジエターを新造し、タイヤも新調。キャブレターをCRキャブからノーマルに戻したらエンジンは難なく掛かったという。しかし、好事魔多しで、すぐさまウォッシャー液が出ない、ウインカーが点かないといったトラブルが出てしまい、挙句の果てには燃料が来なくなってしまって、ホンダZを復活させようという情熱がすっかり萎えてしまったそうだ。 「もう1台の愛車であるランチア・デルタHFインテグラーレ16Vの代わりとしてクラシック・ミニや初代フィアット・パンダが欲しくなるときがありますが、ぼくにはホンダZがあるからいいやと思って、毎回踏みとどまっています。シャコレーサーとして眺めているぶんにはお金が掛かりませんから。可能であればホンダZをこれからもずっとキープしたいわけです。このガレージにMGミジェットとかが入っていても楽しいだろうなといった浮気心も芽生えたりしますが、今後もデルタとホンダZの組み合わせを維持して行こうと思っています」 ◆買った翌日にライトがポロリ 物置でもあり、作業場でもあり、そして、昼はシャコカフェ♯51、夜はシャコバー♯51として、明日への活力を充足させることができるリラックス空間でもあるガレージは、もともと小沼さんの父親が家業で使っていた倉庫だった。1994年に小沼さんが自邸を倉庫の前に新築し父親が廃業すると同時に、倉庫を車庫として専有するようになったという。 かつて愛用していた初代マツダ・ロードスターの整備、ホンダZのエンジン・オーバーホール、デルタのモディファイなどをこのガレージ内で行い、小沼さんは充実した自動車趣味生活を送っている。 「デルタは2004年にネットオークションにて40万円で買ったものです。取りに行った翌日にボンネットを閉めたらフロントの内側のライトがガレージの床に落ちて割れちゃったんで前オーナーにクルマを戻そうと思ったけど断られました」 エンスーなクルマが欲しくなり、初代ロードスターとの入れかえでデルタをゲットしたものの、すぐさま激しく後悔することになった小沼さん。その後、良心的なショップとの出会いもあり、重整備はプロに依頼し、自分でやるのはモディファイや軽整備だけにすることで負担がグッと減ったそうだ。 「デルタは走らせたときの不安を減らすメインテナンスを実施しつつ、サーキット走行も楽しめるようにモディファイしました。エンジンはノーマルでタイヤは普通のラジアル、足まわりもほぼノーマルのまま。主な変更は軽量化のみといった感じですが、筑波サーキットのコース2000を1分10秒で走ることができます。ちなみに車重は1180kgです。フロントが極端に重く、リア・ヘビーと言われているポルシェ911と比べても、デルタの方が前後重量配分の差は大きい。でも、アンダーステアがそれほど強くなく、自分的には乗りやすいです」 取材時は車検が切れていたが、ここ最近、小沼さんはデルタで週末のドライブやミーティングへの参加を楽しんでいる。サーキット走行は、お休みしているのだ。「北茨城に予約しないと食べられない美味しいカレー屋があって、峠の先にあるその名店までデルタを走らせ、ダムカレーを食べています」 奥さんに“デルタはもういいでしょ?”と言われているらしいが、ガレージまでのアプローチが狭く、なおかつ段差があるので、車幅が1800mm以上で車高が低いクルマはガレージに入れない。そういったこともあり、ホンダZとデルタという2台体制はサイズ的にも理想なのだ。 ホンダZが公道復帰したあかつきには、2台をあがりの趣味グルマとしてドライブやミーティングを楽しむ小沼さんと出会えるはずだ。 文=高桑秀典 写真=郡 大二郎 (ENGINE2021年2・3月合併号)
ENGINE編集部