【第3回】最大多数の最大幸福を目指す「功利主義」……“最大多数”に人間以外の生き物は含めるべき?(前編)
ある人の幸福は他の人の幸福とぶつかるという中で、みんなが好き好きに動いたら社会の秩序は保てません。その点で相対主義は大きな欠点を持つことになります。 では、このような倫理の崩壊を生まずに済む、他の思想はあるのでしょうか? そこで紹介したいのが、功利主義です。 功利主義は、18世紀にイギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムが体系化した思想です。概念自体はもっと古くからありましたが、それをかっちり形にしたのがベンサムです。 功利主義を象徴するフレーズが、「最大多数の最大幸福」です。これは、社会の幸福の合計値がもっとも高くなるように、法や政治や人々の行動の指針を決めようという考え方です。
テレビゲームの中では当たり前に行われている「快楽計算」
ベンサムが画期的だったのは、人の幸福すなわち「快」を、「快楽計算」という数学的な方法で数値化したことです。 幸せや人の感情のような目に見えないものを数値化することは、18世紀には突飛なことでも、現代の人々にはすんなり受け入れられることのような気もします。おそらく、テレビゲームの中などでは当たり前に行われていることではないでしょうか? 私自身は残念ながら、ゲームには疎かったりします。日々英会話やパーティに忙しい私は、ゲームにうつつをぬかす時間なんてないんです。だから知識もまったくありません。ゲームより現実の仲間とのかけがえのない時間を大切にしたいタイプの人間ですから私は。 ただ想像で言わせてもらうと、例えば「龍が如く」の食事アイテムはスマイルバーガーが体力30回復で赤牛丸の牛丼だと45回復だとか、「ときめきメモリアル4」で語堂つぐみちゃんを中央公園に誘うと親密度が20上がる一方でエリサ・D・鳴瀬をボウリング場に誘うと15下がるとか、「信長の野望 革新」で家臣へ褒美として与えた時に上昇する忠誠度は九十九髪茄子(つくもかみなす)の場合55で曜変稲葉天目(ようへんいなばてんもく)では42だとか、そういう現実世界では難しい「人の状態や感情を数値化する」ということが、おそらくゲーム界隈では行われているのではないでしょうか? 私はゲームに疎いのでわからないですが。まったくの想像で例えを書いてみました。 ベンサムがやったのも、こういうことなんです。スマイルバーガーを食べることの幸福度は〇ポイントで、語堂つぐみちゃんに告白される幸福度は〇ポイントで九十九髪茄子(茶碗)を購入すると〇ポイント、というように「幸福」「快」を数字で表すことを彼は試みたのです。 もっとも、食べ物の種類だけでもこの世に何万種類とあるわけですからベンサムがそのすべてを採点したというわけではなく、彼がやったのは「採点の基準」を作ったことです。
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