【第3回】最大多数の最大幸福を目指す「功利主義」……“最大多数”に人間以外の生き物は含めるべき?(前編)
人気作家のさくら剛さんが、世の中の「主義・思想」をユーモアたっぷりに、そして皮肉たっぷりにご紹介する哲学・超入門エッセイ。価値観が多様化する現代、人生というダンジョンに地図もなく放り出された私たちは、これからどう生きるべきか? 第3回では、「功利主義」について取り上げます。 *本記事はさくら剛氏の著書『君たちはどの主義で生きるか ~バカバカしい例え話でめぐる世の中の主義・思想』(ウェッジ)の一部を抜粋したものです。 【画像】【第3回】最大多数の最大幸福を目指す「功利主義」……“最大多数”に人間以外の生き物は含めるべき?(前編) 価値観の異なる相手とぶつかるのではなく、「みんなちがって、みんないいよね」とお互いを尊重する相対主義。社会に平和と自由をもたらす、素晴らしい思想だと思いませんか? と、思いきや。 古代ギリシアで相対主義がもてはやされた結果、困ったことが起きました。 なんと、人々の、倫理が崩壊してしまったのです。 相対主義は、ちょっと自由すぎました。あれもいいよねこれもいいよねと、どんな価値観でも肯定しようとすると、「俺は定時前でも帰りたい時間に勝手に帰るぞ‼」という、倫理に反した早退主義すら認めなければいけないことになります(そんな主義はない)。 現代の社会情勢を見るとわかりやすいかもしれません。 21世紀もまた「みんなちがって、みんないい」という言葉がCMで流れる時代ですから、古代ギリシアに続く相対主義の隆盛期と言えるでしょう。しかし、「すべては人それぞれなのだ」とあらゆる価値観を認めることによって、「線路に入って記念撮影してもいいよね」「人の傘を持って行ってもいいよね」「キャンプ場にゴミを置いて帰ってもいいよね」「我が子を小学校にも通わせずクラウドファンディングで資金を集めてアンチを罵りながら配信旅行をしてもいいよね」と、倫理的に問題がある行動を取る人間が続出してしまっています。※架空の例であり、実在の人物や団体等とは一切関係ありません もちろん、子供に義務教育も受けさせずにス〇ディ号で日本一周みたいな(※実在の人物や団体等とは一切関係ありません)、そういう行為まで世間の人たちが「みんなちがってみんないいよね」と認めているわけではないでしょうが、しかし「多様性を認めよう!」という現代社会の風潮が、「小学校にも行かず『少年革〇家』を名乗ってYouTuberになってもまあ許されるだろう」と彼らに思わせてしまっているという部分はあるはずです。※実在の人物や団体等とは一切関係ありませんと自信を持って言い切れない今日この頃です 結局、あらゆる価値観を認めようというのが相対主義の主旨なので、主旨に厳密にこだわれば「倫理違反や悪の行為も認めるのが相対主義」となってしまうのです。
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