「卯之吉さん!」中村隼人主演のNHK BS時代劇「大富豪同心」が歌舞伎化「役者人生を変えてくれた作品」
歌舞伎俳優の中村隼人(31)が主演するNHK BS時代劇「大富豪同心」が来年1月の歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」(2~26日)で「大富豪同心 影武者八巻卯之吉篇」として歌舞伎化される。スポーツ報知では、隼人が主人公の八巻卯之吉に扮(ふん)する写真を独占入手。「卯之吉さん!」と声を掛けられる機会が多く、「役者人生を変えてくれた作品」と愛着を語った。(有野 博幸) 令和元年に誕生した異色の癒やし系時代劇だ。「ヒーローが次々と敵を倒して、一件落着というのが従来の時代劇ですよね。でも、卯之吉はお金持ちで、はんなりとしている」。殺陣の場面で気絶してキョトンとした表情が愛らしく、歌舞伎ではどのように表現されるのか注目される。 江戸が舞台だが、上方歌舞伎の「つっころばし」と言われる二枚目の若旦那を意識して演じる。「殺伐とした物語じゃなく、癒やされる、ほんわかした雰囲気。ずっとニコニコして見ていられる作品を目指したい」。将軍・徳川家政の弟・幸千代(ゆきちよ)も演じる予定で、はんなりとした卯之吉、力強い幸千代の早替わりにも注目だ。 テレビで2019年から3シリーズ放送され、「僕の人生を変えてくれた作品」と愛着を持つ。10、11月に歌舞伎の巡業で全国20か所を巡り「卯之吉さん、いらっしゃ~い!」と声を掛けられた。「僕自身、以前は先頭に立って引っ張っていきたいと思う性格だったんですけど、最近は卯之吉に近づいてきましたね。周りに助けてもらうのもいいなって視野が広くなりました」と意外な効果を語る。 スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」に主演するなど、大躍進の1年だった。「全力で駆け抜けましたね。睡眠を削らないと稽古の時間を確保できなくて、何度も心が折れそうになりました。それでも、役に真摯(しんし)に向き合う姿勢は忘れないように心掛けました」 尊敬する片岡仁左衛門(80)から言われた「情が大事だよ。心を動かせ」という言葉を胸に刻む。「義経千本桜 渡海屋・大物浦」の碇知盛が憧れの役。真骨頂である立役の二枚目に加えて「もっと役柄の幅を広げたい」と意欲的だ。同世代には尾上松也(39)、坂東巳之助(35)、中村壱太郎(34)、尾上右近(32)ら成長著しい花形役者が多く、刺激を受けている。 〇…来年1月5日スタートのNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(日曜・後8時)で「鬼平犯科帳」でおなじみの長谷川平蔵を演じる。「台本がとてもコメディーなので、池波正太郎先生の鬼平とは印象が違うかもしれません。責任重大です」。昨年の舞台「巌流島」以来、親交を深めている横浜流星(28)との再共演には「芝居でガッツリ絡みます。負けていられないですね」と気を引き締めている。 ◆中村 隼人(なかむら・はやと)1993年11月30日、東京都生まれ。31歳。父は中村錦之助。2002年2月歌舞伎座「寺子屋」の松王丸一子小太郎で初舞台。スーパー歌舞伎2「ワンピース」(15、16、17、18年)、「新版オグリ」(19年)などに出演。屋号は萬屋。
報知新聞社