【水島】夏限定で上陸できる無人島「店をやれば儲かるのはわかるけど…」地元の人々が景観美を守り抜く理由は?
あの超有名な紀行作品にも登場!?
水島へ渡る拠点となる色浜地区は、60年近く前までは “陸の孤島”と言われていました。当時、買い物や通院のために敦賀へ行くには、船を使わなくてはなりませんでした。水島の瀬渡しは、そんな道ができる以前から行われていたそうです。ちなみに、1974年まで色浜-敦賀間は町営の定期船が運航していました。 色浜地区は車ならあっという間に通り過ぎる小さな集落。実はこの集落にある小さなビーチ「色ヶ浜」は、なんと松尾芭蕉の『おくのほそ道』にも登場しています。 芭蕉は西行法師が『山家集』で歌った “ますほの小貝”(薄桃色の小さな貝)が浜一面に広がっている様子を見に行ってみようと、色ヶ浜へ舟を走らせました。芭蕉の時代ももちろん敦賀と色浜を結ぶ道はなかったので、アクセスは舟です。 弁当や酒の入った竹筒をたずさえ、多くの下人と共に賑やかな道行。追い風にのってすぐに到着した浜は、わずかな漁師の家と侘しげな法華宗の寺(現在の本隆寺)があるのみ。夕暮れの寂しさは特に心に響くものがあった、という内容。 そして芭蕉は二つの句を残しました。 「寂しさや須磨にかちたる浜の秋」 「波の間や小貝にまじる萩の塵」 今、夏ともなると水島を目指して多くの人が集まり、多い日では1,500人とか、2,000人が訪れるとか。けれど、夏が賑やかな分、その余韻がかすかに残る秋の寂しさは情緒に触れるものなのかもしれません。
この地のグルメといえば、敦賀ふぐ!
ちなみに、水島の手前の海にはブランド魚「敦賀ふぐ」(トラフグ)の養殖のいかだが浮かんでいます。 ここ敦賀湾は三方を山に囲まれ、ミネラルを豊富に含んだ春の雪解け水が海に流れ込みます。フグの養殖場としては日本最北端に位置し、夏には水温30度まで上がり、真冬になると10度前後まで下がり、一年のうちの海水温の差が約20度も。そのため身が引き締まり、滋味深い味わいになるそう。 敦賀ふぐを育てる中井さんによると、トラフグの歯は非常に鋭く、フグ同士で傷つけあったり、網を破ってしまったりすることがあるとか。そのために稚魚がある程度育った段階で歯切り作業を行うそう。1万匹あまりの稚魚を一匹ずつ、手作業で歯切り……。膨大な作業量に、想像するだけでくらくらしそうです。 こうして1年半かけて手塩にかけて育てた敦賀ふぐ。フグの旬は10~3月ですが、中井さんが切り盛りする旅館「敦賀ふぐの宿 なかい」では通年、提供しているそうです。 夏だけの水島と、夏でもいただける敦賀ふぐ。新幹線の開通で行きやすくなったことですし、この夏、いかがでしょう。夏が去った後の、芭蕉が感じ入った秋の寂しさも味わってみたいところですが。 水島 ●アクセス 敦賀駅から車で色ヶ浜へ約30分 そこから瀬渡しで約10分 ●おすすめステイ先 コートヤード・バイ・マリオット福井 取材協力 敦賀観光協会 古関千恵子(こせき ちえこ) リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。 ●オフィシャルサイト
古関 千恵子