「飛行機」と「半導体」。凋落する国産ブランドに、菅総理は無関心だ
『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、国産ブランドの失速について憂慮する。 (この記事は、11月2日発売の『週刊プレイボーイ46号』に掲載されたものです) * * * 日の丸企業が不振だ。ひとつは三菱重工業がジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の事業を凍結する方針を固めたというニュースだ。 スペースジェットは官民で国産ジェットを実現させようと、三菱重工と経産省がタッグを組み、2008年にスタートさせた日の丸プロジェクトだった。しかし、設計トラブルなどが相次ぎ、これまで6度も納入が延期されてきた。その間つぎ込まれた資金は約1兆円だという。 同時期に小型ジェットの開発・製造に着手したブラジルの航空機メーカー、エンブラエルは海外メーカーから優秀な技術者をヘッドハンティングするなど、柔軟な体制で開発に臨み、18年に初号機の納入にこぎ着けた。しかし、三菱重工は自前主義にこだわって迷走を重ね、ついに商業運航に必要な各国の「型式認証」すら取得できなかった。 三菱重工は、かつて「零戦」を開発したメーカーである。優秀な技術者を数多く抱え、同社と川崎重工業、SUBARUの3社でボーイング787の部品の約35%を供給してきた。その名門企業が開発競争でブラジルの新興メーカーに負けるとは、ほとんどの日本国民は予想していなかったはずだ。 しかし、撤退のニュースを受けて、東京株式市場では三菱重工の株が一時、前日比7%(155円)も上がったというのだから、いかに市場が日の丸ジェットの先行きに対して悲観していたかがわかる。 そして、もうひとつの日の丸企業、「キオクシア」(旧東芝メモリ)を取り巻く環境も厳しい。世界の急速なデジタル化のカギを握る半導体産業は、かつては日本のお家芸だったが、日本の有力企業は次々に脱落。唯一踏ん張っているのがNAND型フラッシュメモリで世界2位のキオクシアだが、近く3番手に格下げになりそうだ。